Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

63.2%の憂鬱(3)

63.2%の憂鬱(2)」からの続き。


翌日の学校で、彼女に説明をした。とりあえずは、プレゼント交換で自分のプレゼントを受け取らないやり方について。
「だから、やり方としては2つ思いついた。ひとつは単純に、くじ引きなどで自分のプレゼントがでたらやり直す方法。これはいいよね。」
彼女はうなずいた。
「もうひとつは、何らかの方法、ゲームとかくじでもいいけど順位を決めて1番から好きな物を選ばせるというもの。このどちらかでいいんじゃないかな。」
「うーん、そうね。これで考えてみる。ありがとう。」
「あ、でも。」
と言いかけてやっぱり言うのはよそうかと口を閉じたんだけど、彼女に促されて続けた。
「どちらの方法にしても、完全に問題を解決したわけではないんだ。つまり、最後のひとりの時に自分のプレゼントしか残っていなかったらそれを受け取るしか無いというわけ。でもその確率は低いよ。これは本当に人数分の1になるんだから。」
そういって、昨日の晩のことを思い出して暗くなった。彼女はそんな僕の様子には気がつかない様子で、
「あいかわらず細かいことに気が回るね。まあだから頼んだんだけど。」
そう言ってかすかに笑ったように見えた。
「ところで。」
と彼女は続けて言う。
「何もしない場合に自分のプレゼントを受け取らない確率の話は昨日のでいいの? 人数分の1だっけ。」
「いや。」
僕は仕方なしに口を開いた。
「昨日の話は全くの間違い。例えば4人でプレゼント交換をした場合は、全部で24通りのうち9通りで誰も自分のプレゼントを受け取らない。」
「6通りよりも多いんだ。ところで24通りになるのはどうしてなんだっけ? 昨日の話でわからなかったから聞こうと思っていたんだけど。」
「うーん。計算としては4×3×2が24になるからなんだけど。まずA子さんからプレゼントを選ぶとしたらaからdの4つのどれでもいいから4通りだよね。ここまではいいかな。」
彼女はうなずいてこちらを見ている。
「次のB子さんは、A子さんが選んだ残りの3つから選ぶので3通り。C子さんは同じようにして2通り。最後のD子さんは残りの1つをとる。」
「ところで、どうして掛け合わせることができるの。」
そこから説明しないといけないのか。
「最初にA子さんが選んだ4通りのうちのすべての場合で、B子さんが3通りの選択が可能で、B子さんが選んだすべてでもC子さんの選択が可能だからかな。数学の言葉だと互いに独立とか言うんだけど。」
「ふーん。何となくわったかも。独立という言葉は聞いた覚えがある、かな。」
「まあそんなところ。この独立というのは重要で、独立が保たれない場合は簡単に計算できないんだ。」


そう、それが昨日の僕の間違い。同じ4人の場合で、自分のプレゼントを受け取らない場合を考えると、最初のA子さんが3/4の確率で自分のものでないプレゼントを選ぶ。ここまではいい。
でも次のB子さんが自分のプレゼントでないのを選ぶ確率は2/3にはならない。これは最初にA子さんが何を選んだかによるからだ。
つまり、A子さんが選んだプレゼントがB子さんのプレゼントbである場合も考えないといけない。この場合は、残りの4つにB子さんのプレゼントは無いので3つのどれでも選ぶことが出来る。つまり3通り。

A子B子


そしてA子さんがc、dのプレゼントを選んだ場合には残りの3つにbが含まれるので、それ以外の2つを選ぶ場合を考えることになる。

A子B子


このあたりまでならそれぞれの場合の確率を計算することもできるけど、C子さんD子さんといくうちに場合はどんどん増えていく。それでも4人の場合くらいなら計算は可能だろうけど、これなら24通りすべてについて直接考えたほうが早いし、数が増えたら計算量もどんどん増えていく。
これがまあ、昨日の考えのどこが間違っていたかということの説明だけども、これを彼女に説明しようとは思わなかった。僕の中でも、この問題についてはとりあえず棚上げしておくことにした。
この問題の進展があったのは、年末近くになってからの話だ。


(「63.2%の憂鬱(4)」につづく)