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熱回路理論

http://homepage3.nifty.com/iromono/diary/200810B.html#17に書かれている「前野[いろもの物理学者]昌弘のページ:2008.10.20」から。

板などの片方を熱すると、熱が伝わって反対側も熱くなってくる。このような現象を熱伝導と言うが、この現象は波動が起こる条件のうち二つは満たしている。というのは、

[復元力]高温部分から低温部分へと熱が流れるので、温度は常に一定になろうとする。これは、温度勾配をなくそうとする作用なので、立派な復元力である。
[伝播]熱が流れるということは、温度がまわりより高い場所(低い場所)はまわりの温度を上げる(下げる)ということ。つまり現象は伝播する。
である。以上から(2)と(3)は満たしているが(1)を満たしていない。つまり、今温度が下がっていたとしても、まわりの温度と同じになればそこで温度変化は止まってしまう。よって熱伝導は波動にならない。

http://homepage3.nifty.com/iromono/diary/200810B.html#17


熱と電気の伝わり方には共通点も多く、似たような用語も使われていますが違う部分もあるようです。熱伝導で慣性が無いということは、電気での誘導成分が存在しないということです。これは電気回路でのコイルに相当するものが無いということ、でいいのかな。
熱を貯める、電気で言うとコンデンサの働きをするものはあるし、抵抗器に相当する物もあります。熱抵抗という言葉も使われているくらいです。その他の相似としては熱が電気、温度が電圧に相当すると考えられます。熱や電気が伝わることは、どちらも伝導と呼ばれます。相違点としては、熱を伝える粒としての熱素は否定されましたが、電気を伝える粒の電子は発見されたことがあります。


超伝導といえば電気伝導に関するものですが、SF小説には熱の超伝導というのもでてきます。「リングワールド」かその続編には常温超伝導物質が出てきますが、これは電気だけでなく熱に関しても超伝導を示すとして扱われています。長いワイヤー状になっていても、一部を加熱すると全体に熱が広がる性質を持つので、温度差が存在しないで同じ温度になると描写されています。日本の小説でも「銀河乞食軍団シリーズ」の外伝に熱の超伝導物質が出てきました。


現実の物理学の用語として熱の超伝導物質というのはありませんが、ヒートパイプのような通常の物質にくらべると低い熱抵抗を持つデバイスの説明に熱の超伝導という言葉が使われることもあるようです。ただ、ヒートパイプは単一の物質ではなく、内部に閉じ込められた媒質が移動しながら気化と液化を繰り返すことで見かけ上の高い熱伝導率を達成しています。
単一の物質としては、超流動状態の液体ヘリウムが高い熱伝導性を示しますが、これも伝導というよりは対流によって熱が伝わっているとしたほうが正確かもしれません。