63.2%の憂鬱(5)
「63.2%の憂鬱(4)」からの続き。
人数 | 重複しない組み合せ | 全ての組み合わせ | 比率 |
---|---|---|---|
1 | 0 | 1 | 0% |
2 | 1 | 2 | 50% |
3 | 2 | 6 | 33.3% |
4 | 9 | 24 | 37.5% |
5 | 44 | 120 | 36.7% |
6 | 265 | 720 | 36.8% |
7 | 1854 | 5040 | 36.8% |
8 | 14833 | 40320 | 36.8% |
9 | 133496 | 362880 | 36.8% |
10 | 1334961 | 3628800 | 36.8% |
11 | 14684570 | 39916800 | 36.8% |
12 | 176214841 | 479001600 | 36.8% |
13 | 2290792932 | 6227020800 | 36.8% |
14 | 32071101049 | 87178291200 | 36.8% |
15 | 481066515734 | 1307674368000 | 36.8% |
16 | 7697064251745 | 20922789888000 | 36.8% |
17 | 130850092279664 | 355687428096000 | 36.8% |
18 | 2355301661033950 | 6402373705728000 | 36.8% |
19 | 44750731559645100 | 121645100408832000 | 36.8% |
20 | 895014631192902000 | 2432902008176640000 | 36.8% |
人数が多くなるにしたがって、自分のプレゼントを受け取らない場合の組み合わせの数は増えるけど、全体の組み合わせも増えていく。そしてその割合を計算すると、一定の値に収束するように見える。
グラフにしたものはこれ。対数目盛なので、見た目の差が一定なのは比が一定ということ。
しばらく結果を眺めながらぼーっとしていたら、父親が帰ってきたのでプリントしてそれを持っていった。前に言っていたことからすると、何か知っているかもと思ったからだ。
「ちょっとこれを見て欲しいんだけど。この前話したプレゼント交換で自分のプレゼントを受け取らない場合の話。」
と言ってプリントアウトを差し出した。
「どれどれ。」
父親は受け取った紙を眺めながら台所に行ってビールを持って戻ってきた。
紙をこちらに戻しながら、
「これでいいんじゃないかな。一定の値に収束しているみたいだし。」
とこともなげに言う。
「その一定の値に収束するのが不思議なんだけど。」
と答えたら、不思議そうに、
「それも本だかウェブだか、調べた物に書いてあると思うけど。」
と言うので、
「別に調べたわけじゃないんだけど。調べるといっても何を調べるの?」
と尋ねた。
「へえ、それじゃあ自分で考えたんだ。それはそれは…。」
などと言いながらビールを飲んでいたが、
「モンモール数や完全順列で調べるとわかるよ。」
と言った。
「そのモンモール数っていうのが、このプレゼント交換と関係があるの。」
「関係あるというか、そのものだね。でもプレゼント交換で説明するのは見たこと無いけど。」
「そうなんだ。」
「そういえば、36.8%という値の意味も知らないんだ。」
「意味って、何かあるの?」
「うーん、自分で調べたほうが面白いんだけど、」
と言いよどんでいたが、催促すると続けて。
「逆数をとると約2.7になるんだ。」
「それが、何か。あっ、自然対数の底?」
「その通り。理由を説明しろと言われてもわからないけど、自然対数の底の逆数に収束するんだ。」
後になって「モンモール数」や「完全順列」で検索して、説明を読んだので計算結果としてそうなるということは納得したのだけれど、不思議さはあいかわらずだ。ある程度人数が多ければ、約63.2%の確率で誰かが自分のプレゼントを受け取る。そしてこれはどんなに人数が多くなっても変わらないというのは、計算上は明らかだが直感には反する。
日本の住人全員でプレゼント交換をしたとしても、誰かが自分のプレゼントを受け取る可能性が約63.2%ということを実感するのは難しい。
(おわり)