Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

人工妊娠中絶と極端な設定

http://d.hatena.ne.jp/trivial/20090322/1237706422の『人工妊娠中絶問題における「見えない人」 - 一本足の蛸』で紹介されていた「バイオリニストの比喩」からの連想。
ブラックジャック」の中にも、親子をくっつける手術が出てきました。臓器移植をしないと助からない子供がいて、ドナーが見つかるまでのつなぎとして、母親と一体化することで生命を維持する為です。これは親子であるという点から、「バイオリニストの比喩」よりも妊娠に近いといえるかも。


グレッグ・イーガンの「適切な愛」にはもっと直接的な形で妊娠が登場します。事故にあった夫の生命を維持するのに妻の身体が使われるという点では、「バイオリニストの比喩」やブラックジャックの話と同じです。違う点としては、他者と血液を共有すると臓器移植と同様の免疫の問題が発生しますが、そうならないように胎盤を経由して血液を供給するようにすることです。つまり胎児の変わりに夫の身体の一部を妊娠するような状態です。
前に読んだときにはそうは思わなかったのですが、この話は人工妊娠中絶に関連していると解釈することもできるかも。


人工妊娠中絶といえば、P・K・ディックの「まだ人間じゃない」もあります。生後堕胎が認められた世界が舞台です。妊娠のある時期以前の胎児をある定義によって人間ではないとして中絶できるのならば、定義を変更すれば生まれた後であっても中絶可能になるわけです。この話は中絶反対の立場から書かれたようです。


SF的な空想としては別のことも考えられます。
例えば

  • 人間が鳥類のように卵を産むのだったら。
  • 人間がカンガルーのような有袋類だったら。

なんてのはどうでしょう。

卵を産んで育てる人間は、卵が生まれた時点で人間であると判断するのではしないでしょうか。もし、卵が孵るまでは人間ではないとすると、成長途中の卵を「中絶」することが出来てしまいます。それとも特別な場合の他は無精卵か有精卵かの区別もしないでトイレのサニタリーボックスに廃棄してしまうとか。


有袋類の人間だと、いったん産んだ赤ちゃんが袋のなかで第二の妊娠のような状態になります。出産後に袋に入れないで中絶することも問題なくできたりするんだろうかとか考えます。それが出来ないと、中絶可能な期間はかなり短くなりそうです。


そういえば前にも「まだ人間じゃない生命」というエントリーを書きました。そこでディックの「まだ人間じゃない」の他に草上仁の「死刑」という話を取り上げました。これに出てくるイングリッチナ人は、どんな小さな生命も自分達の生命と同等だと信じています。知性の有無とは関係なく、小さな虫であってもです。そして一つの生命は、一つの生命で償わなければならないという考えをもっています。
イングリッチナ人は、人間の精液に含まれる精子ひとつひとつさえ自分達と同等な生命と考えています。