Log of ROYGB

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ニューカムのパラドックス

物理学者のビル・ニューカムの考えた「ニューカムパラドックス」と呼ばれる問題について。
これは封筒問題のような数学の問題のようにも思えますが、量子力学に関係しています。ブルーバックスの「量子の謎をとく」という本に書かれていたものから引用します。

例の魔術師が部屋に入ってきて、また、あなたの前に座ったとしよう。彼がいうには、「私は未来を目撃する力をもっている。私は今、あなたに贈り物をもってきた。もしあなたが私の力を信じるなら、あなたは莫大な富を手に入れることになる」
魔術師はそういうと、二つの小さな箱をとり出して前においた。最初の箱には“L”、もう一つの箱には“R”とラベルがはってあった。さらに彼はつづけていう。
「Lの箱に、私は1000ドルを入れた。Rの箱には100万ドル(もちろん小切手で)を入れたかもしれないし、いれなかったかもしれない。ここであなたには二通りの選択が許される。Rの箱のみを選ぶか、それともLとRの両方を選ぶかである」
あなたは、この二つの箱をどう選択したらよいか、ちょっと考える。しかしあなたは、どちらを選択しても大して意味がないことを知る。あなたは、きっと何か、しかけがあるにちがいないと考える。そのとき魔術師がいうには、「あなたが100万ドルを手に入れるには“私”を信じなくてはいけない。私は未来を見抜くことができる。私にはすでにあなたがどちらを選ぼうとしているか、わかっている。もしあなたがRの箱を選ぶときには、その選択はむくわれて、あなたは箱の中に100万ドルを見つけるだろう。その反対に、もしあなたが欲深くて両方の箱を選択したときには、Rの箱には何も入っていないことを知るべきである。あなたの取り分は、Lの箱の1000ドルだけになる」
彼は自信に満ちあふれている。さらに彼は、約束したことだけを実行するという評判である。彼は今、箱には手をふれていない。100万ドルはRの箱の中にあるのか、ないのか、そのどちらかである。


量子の謎をとく―アインシュタインも悩んだ…… (ブルーバックス (B‐841))」F・A・ウルフ著 193ページより引用。


未来がわかるのだったら、どちらを選択するのかも教えて欲しいところですが、そうもいかないのでしょう。
LとRの箱の状態は以下の2つの場合が考えられます。


1.Lの箱に1000ドル、Rの箱に100万ドル入っている。
2.Lの箱に1000ドル入っているが、Rの箱には何も入っていない。


それぞれの場合で、Rの箱のみを選ぶか、LとRの両方の箱を選ぶかという選択がありえるとすると4通りになります。


1−A.Rの箱を選び、100万ドルを得る。
1−B.LとRの箱を選び、100万1000ドルを得る。
2−A.Rの箱を選び、何も得ない。
2−B.LとRの箱を選び、1000ドルを得る。


こう考えると、Rの箱の中に100万ドルがはいっていようといまいと、LとRの両方の箱を選択する方が得る金額は大きくなります。しかし、魔術師の言葉を信じるならば1−B.と2−A.は、ありえません。でも箱の状態がどうであろうと、Rの箱を選ぶこともできるし、LとRの箱を選ぶこともできるのではないでしょうか。


日常的なサイズ、具体的には1000ドルの紙幣を入れることが可能な程度の大きさの箱の場合には、4通りの選択が可能であることに間違いはないでしょう。しかし、原子などのサイズでは2通りしかないと考えられるようです。選択によって状態が決定されるからです。