Log of ROYGB

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EPRパラドックス

アインシュタインとポルドスキー、ローゼンによって書かれた論文「物理的実在に対する量子力学的記述ははたして完全であろうか」の中身は、EPRパラドックスとして知られています。
EPRパラドックスというと、後になってベルが考えて、アスペの実験によって確認された光子のスピンに関するものが有名なのですが、もとの論文では粒子の位置と運動量について考えています。

アインシュタインと彼の協力者たちは、量子力学を使って、一つの物体の位置または運動量のどちらかを、その物体をかく乱することなく予言できることを証明した。つまり、観測者が与えうるすべての影響からその物体がはなれたあとで、これらの二つの物理量のどちらかを確実性をもって予言できるというのである。しかし、二つのうちどちらを選ぶかは観測者に依存することで、その物体の関与することではない。したがってEPR*1によると、その物体は予言以前においては“両方”の物理量を持っていたはずで、観測者のなしうることは、どちらかの物理量を予言するかの選択だけである。


量子の謎をとく―アインシュタインも悩んだ…… (ブルーバックス (B‐841))」F・A・ウルフ著 204ページより引用。


位置と運動量の両方を同時に測定することが出来ないのは、ハイゼンベルク不確定性原理によるものです。しかし、どちらでも選んだほうは測定できるのだから、位置も運動量も確かに存在するはずだというのがアインシュタイン達の考えのようです。しかしこれは間違っていて、位置か運動量のどちらかしか存在しないし、どちらが存在するのかは観測したことによって定まります。
昨日のニューカムの問題では、箱の開け方の選択をすることで箱の中身が変わるという不思議なことが示されましたが、量子力学はその不思議なことが実在することを説明します。


光が波なのか粒子なのかというのも同様の問題です。波として観察される場合もあるし、粒子として観察される場合もあります。でも同時に両方を観察することは出来ません。
二重スリットを通った光は、スクリーンに波がつくるような干渉縞が現れます。しかし、二つあるスリットのどちらを光が通るのかを観察すると、干渉縞は消えてしまいます。どちらのスリットかという位置を測定することによって、光の波の性質は消えうせてしまいます。
もともとの干渉縞を作る二重スリットの実験では、光の波としての性質が観察されます。このときには、光の粒子としての性質は消えうせて、どちらのスリットを通ったのかはわかりません。単に測定できないのではなく、本質的にわからないわけです。

*1:引用者注:アインシュタインとポルドスキー、ローゼンのこと。