Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

群馬県の体積

群馬県の体積って何だかわかる?」
彼女はそう言うと、僕が答えるのを待ち構えるようにじっとこちらを見ている。面積ならともかく、体積とは。でも群馬県は数学の図形のような二次元の存在ではなく、実体を持った三次元の存在だから体積も存在するはずだ。
「あー、つまり群馬県の体積とは、」
「体積とは?」
群馬県から地球の中心までの体積のことじゃないかな。」
「なるほどね。群馬県の体積といきなり言っても、そうなるんだ。」
彼女によると、インターネットのサイトで「群馬県の体積」という言葉を見かけたらしい。*1そこでも群馬県から地球の中心までを群馬県の体積として書いていたそうなのだ。
「それで、その体積の求め方は書いてなかったのよ。計算が容易だとかいうのに。」
少し口を尖らせた彼女。その次に何を言うかはだいたい想像がついた。
「体積の求め方を教えてくれるかな。」
想像は当たった。
「たしかに容易だね。面積を2000倍すれば体積になる。まあおおよそだけどね。」
僕はなるべくあっさりとそう言って、彼女を見つめた。めずらしく頭が冴えたというか、わかってしまえば単純なことだ。それでも過程を飛ばして結果だけ言うと、なんか不思議に感じるだろう。
しばらく首をひねっていた彼女は、
「わからない。お手上げだ、説明してよ。」
と言いながら両手を上げた。

「つまり三角錐の体積なんだよ。底面積×高さ÷3」
僕は説明を始めた。
「この場合は上下がひっくり返っているけどね。」
「それに群馬県の形は三角じゃないから、三角錐でもなく言うなれば群馬県錐なのかしら。」
群馬県錐という言葉は始めて聞いた。群馬県の体積もだけど。
「まあそうだね。でも複雑な形でも三角形の集まりとみなせるので、群馬県錐でも三角錐と同じように計算可能なんだ。」
「ふうん。」
「球の体積を求めるのもこれと同じ考え方を使っていて、表面積に半径の3分の1をかけたものが体積なんだ。」
「表面積が4πr^2で、体積が4/3・πr^3だから、そうか。わかった。」
僕は続きを説明しようとしたが、彼女が
「さっきの2000が地球の半径の3分の1というわけね。」
と言ったのでその必要は無くなった。群馬県を底面積とする三角錐の集まりの高さは、地球の半径なので、半径をかけて3で割ると体積が求まるし、最初に半径を3で割っても同じことだ。
「ところで、」
と彼女。
「なに。」
「地球の半径は6000キロでいいんだっけ。」
「うーん。実際は6千何百キロだったかな。ちょっと待ってね。」
僕は電卓で20000÷3.14を計算した。
「だいたい6300キロか。」
地球の円周が約4万キロなので、それを円周率で割れば直径が、さらに2で割ると半径が求まる。地球の円周の4万キロはわりと正確というか、メートルの長さが地球の円周をもとに決められたのだから当然だ。
「まあ概算なら6000キロでもいいんじゃないかな。」
僕は言った。群馬県の体積を正確に求めても何か良いことがあるわけではない。まあそれを言うと、体積を求めること自体にたいした意味はない。それに付随することはともかく。
「そうね。面積のほうも概算でしか求められないしね。」
概算でしか求められないというのはどういうことだろう。どんな測定にも誤差はあるけれど、精密に測定していくことで正しい値に近づくことは可能だ。
だから僕はこう答えた。
「概算でしかということも無いんじゃないかな。」
「さあ、それはどうかしら。」
彼女はそう言うと、手をひらひらと振って行ってしまった。


群馬県の面積」に続く。

*1:この話はフィクションですが、群馬県の体積については実在するhttp://d.hatena.ne.jp/trivial/20100113/1263386814の「大豆肉の炒め物を作った - 一本足の蛸」を参考にしました。