Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

「都条例賛成派」に関する話

http://anond.hatelabo.jp/20101219161704の「都条例賛成派」に関する話。

読んだ後にブックマーク*1して、コメントにはこう書きました。

ROYGB 条例にはあるけど。参考:http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/08_jyourei/08_p1.pdf 2010/12/19


これは、だいたいこのあたりに対するもの。

条令を作る本来の主旨である実在児童を保護するための包括的な考え(漫画規制以外にもいろいろあるはず)は一言も言ってない気がする。

http://anond.hatelabo.jp/20101219161704


そうしたら、はてなメッセージがやってきました。

id:yachimon 東京都青少年条例問題, 増田 最近の漫画は低俗だREDいちごが悪いんだ系の記述読んだら、それ規制されないんですよ的なコメントをすることにしてる。規制されるかもだけど。/ id:ROYGB どの条文ですか? 2010/12/19

どの条文かというと、条文ではなく前文です。


東京都青少年の健全な育成に関する条例の前文にはこう書かれています。

われら都民は、次代の社会をになうべき青少年が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のな
かで心身ともに健やかに成長することをねがうものである。
われら都民は、家庭及び勤労の場所その他の社会における正しい指導が、青少年の人格の形成に寄与
するところきわめて大なることを銘記しなければならない。
われら都民は、心身ともに健全な青少年を育成する責務を有することを深く自覚し、青少年もまた社
会の成員としての自覚と責任をもつて生活を律するように努めなければならない。

http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/08_jyourei/08_p1.pdf


この前文が、条例の主旨というか包括的な考え、目的などを表しているものである。というのが“どの条文ですか?”という質問に対する直接の回答です。
せっかくなので、もう少し詳しく条文も紹介しますが、少し長いので続きを読む記法を使って見えなくしておきます。


まずは目次から。

目次
前文
第1章 総則(第1条−第4条の3)
第2章 優良図書類等の推奨及び表彰(第5条・第6条)
第3章 不健全な図書類等の販売等の規制(第7条−第18条の2)
第3章の2 青少年の性に関する健全な判断能力の育成(第18条の3−第18条の6)
第3章の3 インターネット利用環境の整備(第18条の7―第18条の9)
第4章 東京都青少年健全育成審議会(第19条−第24条の2)
第5章 罰則(第24条の3−第30条)
第6章 雑則(第31条)
付則

http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/08_jyourei/08_p1.pdf

第3章が、今回の条例改正で話題になった不健全図書の指定に関するものが書かれている部分です。インターネット関連は、第3章の3です。
最初に作られた条文が改正されて追加された部分に、第○章の2とか、第○条の2とか“の2”のように後に数字がついているようです。


第2章が優良図書類等の推奨及び表彰となっていることからもわかるように、この条例は必ずしも規制のためだけのものではありません。
でも第3章の不健全な図書類の販売の規制が7条から18条の2までと多くの部分を占めているし、第3章の2、第3章の3と改正によってどんどん増えているではないか。という指摘は、目次を見ただけでも可能です。しかし、目次だけでなく条文まで読んでいくと不健全な図書類が、マンガだけではないことがわかります。


以下、話を進めるのに都合がいい部分を選んで紹介します。
まずはがん具類の規制についての第7条の2。

(がん具類の販売等の自主規制)
第7条の2 がん具類の製造又は販売を業とする者は、がん具類の構造又は機能が、青少年に対し、性的
感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそ
れがあると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該がん具類を青少年に販売し、又は頒
布しないように努めなければならない。
(刃物の販売等の自主規制)
第7条の3 刃物(銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号)第2条第2項に規定する刀剣類を
除く。以下同じ。)の製造又は販売を業とする者は、刃物の構造又は機能が、青少年又はその他の者の
生命又は身体に対し、危険又は被害を誘発するおそれがあると認めるときは、相互に協力し、緊密な連
絡の下に、当該刃物を青少年に販売し、又は頒布しないように努めなければならない。

http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/08_jyourei/08_p1.pdf


がん具類の販売規制もありますが、同じではつまらないので他の規制で映画に関するもの。

(指定映画の観覧の制限)
第10条 興行場において、第8条第1項第1号の規定により知事が指定した映画(以下「指定映画」と
いう。)を上映するときは、当該興行場を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、これ
を青少年に観覧させてはならない。
2 何人も、青少年に指定映画を観覧させないように努めなければならない。
(指定演劇等の観覧の制限)
第11条 興行場において、第8条第1項第1号の規定により知事が指定した演劇、演芸又は見せもの(以
下「指定演劇等」という。)を上演し、又は観覧に供するときは、当該興行場を経営する者及びその代
理人、使用人その他の従業者は、これを青少年に観覧させてはならない。
(観覧等の制限の掲示
第12条 指定映画または指定演劇等を上映し、上演し、または観覧に供している興行場を経営する者は、
当該興行場の入口の見やすいところに、東京都規則で定める様式による掲示をしておかなければならな
い。


質屋に関する規制もあります。古物商の規制は、ブックオフなどの本の買取りにも適用されるのでしょうか。

第15条 質屋(質屋営業法(昭和25年法律第158号)第1条第2項に規定する質屋をいう。以下同
じ。)は、青少年から物品(次条第1項に規定する物を除く。)を質に取つて金銭を貸し付けてはなら
ない。
2 古物商(古物営業法(昭和24年法律第108号)第2条第3項に規定する古物商をいう。以下同じ。)
は、青少年から古物(次条第1項に規定する物を除く。)を買い受けてはならない。
3 前二項の規定は、青少年が保護者の委託を受け、又は保護者の同行若しくは同意を得て、物品の質入
れ又は古物の売却をするものと認められるときは、適用しない。
4 何人も、正当な理由がある場合を除き、青少年から質入れ又は古物の売却の委託を受けないように努め
なければならない。


15条の2は、特殊なものの買取りについて。ブルセラショップ対策でしょうか。

(着用済み下着等の買受け等の禁止)
第15条の2 何人も、青少年から着用済み下着等(青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しく
はふん尿をいい、青少年がこれらに該当すると称した下着、だ液又はふん尿を含む。以下この条におい
て同じ。)を買い受け、売却の委託を受け、又は着用済み下着等の売却の相手方を青少年に紹介しては
ならない。
2 何人も、前項に規定する行為が行われることを知つて、その場所を提供してはならない。


15条の3もあります。“だ液若しくはふん尿”という条文が出来た理由が気になったり。

(青少年への勧誘行為の禁止)
第15条の3 何人も、青少年に対し、次に掲げる行為を行つてはならない。
一 青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿を売却するように勧誘すること。
性風俗関連特殊営業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第12
2号。以下「風適法」という。)第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業をいう。)において客
に接する業務に従事するように勧誘すること。
三 接待飲食等営業(風適法第2条第4項に規定する接待飲食等営業のうち、同条第1項第2号に該当す
る営業をいう。)の客となるように勧誘すること。

15条の4は深夜外出の制限で、バリエーションに富んだ15条は終わります。


つづいて、第18条の6。非実在じゃなくて実在の青少年に関する規制です。

(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第18条の6 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。

この18条は最初から順に読んでいくと、結局はこうなるなのか、といったどんでん返しというか予定調和が楽しめます。


あとは不健全図書の指定も行っている審議会に関する第20条。

第20条 審議会は、次の各号に掲げる者につき、知事が任命または委嘱する委員20人以内をもつて組
織する。
一 業界に関係を有する者 3人以内
二 青少年の保護者 3人以内
三 学識経験を有する者 8人以内
四 関係行政機関の職員 3人以内
五 東京都の職員 3人以内

なんと業界関係者も入っています。条文で3人以内となっていますが、現在の業界関係者の委員は3名です。現在誰が委員になっているのかは、公表されています。*2
都議会議員や新聞社の論説委員もいて、この名簿もなかなか興味深いものがあります。


興味深いといえば、今年の8月に「青少年健全育成のための図書類の販売等のあり方に関する関係者意見交換会」というのが2回開かれています。直接条例改正について話してはいませんが、開催時期と内容からすれば何らかの関係があると思われても不思議はないところです。
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/09_ikenkoukankai.htmlで議事録が公開されています。