Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

仲間外れの8(1)

1を998001で割ると0.000001002003004005…と続いていくという面白い結果になるというのをインターネット*1で前日に読んだ僕は、放課後の部室でそれについて考えていた。998001の代わりに9801で割ってもいいらしい。
その場合は0.0001020304050607080910111213…と2桁で数が増えていく。
なんでそうなるのかというのが不思議だったけど、1桁の場合には81で割ればいいというのがわかってからは簡単だった。81=9*9で998001=99*99そして998001=999*999という具合だ。
1を9で割ると0.11111…と無限に1が続いていく。それをさらに9で割ると、0.012345…と数が増えていく。
念のために計算してみることにした。11から9を引くと次は21で、2が立つから18を引いて31、と数が増えていくのが実感できる。



あ、71から63を引いて81になると次は8じゃなくて9になるのか。9*9=81だから余り無しでまた最初に戻る。012345679と8を飛ばして続いていく。
だから98も飛ぶのか。2桁の場合に98が飛んで99になると書いてあった理由がようやくわかった。そして3桁の場合には998が飛ばされて999になるわけだ。
「マジックの練習でもしているの?」
確かにマジックだ。いや今の声は誰だ? と驚いて顔を上げるとこちらを見つめる彼女と目が合った。さらに驚いてああどうもとか言おうとして口をもごもごさせた。
すこし落ち着いてから、
「マジックって、これのこと?」
を計算した紙を指差して聞いてみた。
「ちがうの? 同じ数が沢山でてくるマジックで見た気がしたんだけど。」
と彼女は12345679という数字を指さした。
同じ数が出てくるマジックというと、確か相手の言った数に9をかけた数を最初に書いた12345679にかけると相手の言った数が並ぶという…。そうか、そんな手品が確かにあった。
「いや、ちょっと違うんだけど、まあ原理は同じといえば同じような。」
僕は何かのスイッチが入ったかのように説明を始める。12345679を使ったマジックの原理について。12345679に9をかけると111111111と1が9個並ぶ。だからそれに3をかければ3が並ぶし、7をかければ7が並ぶのは数学的には当たり前のことで種もしかけも無いこと。
1を81で割った場合も同じことで、1を9で割ると0.1111…と1が無限に続くので9桁ごとに区切って考えればそれをさらに9で割ったものはマジックと同じだけど小数点以下だから最上位桁の0が消えずに012345679となる。
「じゃあ、それに好きな数を9倍した数をかければ同じ数字がどこまでも並ぶんだ。」
少し首をかしげながら彼女が口を挟む。
「そうだね。やってみる?」
「じゃあ9ね。」
部室にあるパソコンの電卓を使う。まず1割る81だ。0.012345679012345679…と続く。これに9だから81をかけると。
「あれ?」
小数点以下に9が並ぶはずが、表示は1だった。
「おかしいな。」
僕はもう一度やってみる。1割る81かける81だから…。
「あ!」
「どうしたの?」
「ごめんダメだ。0.9999…にはならないんだ。」
「1になっちゃうわけね。」
「そうなんだ。」
僕は9以外の数なら小数点以下に並ぶことを確かめて彼女に説明した。でも彼女はそんなことは僕以上に理解していたのかもしれない。ときどき僕なんかよりもよっぼど数学的才能があるんではと思わされることがある。
「こんなのはどうかな。」
パソコンに向かって何かをしていた彼女がこちらを振り返った。電卓の表示は0.111…と1がいくつか続く合間に0が入っていた。1の数は違うけど0.111011101110…みたいな感じだった。
「さて、これを9で割るとどうなるでしょう。」
僕は言われるままに、9で割ってみた。
そこには、0.01234567890123456789…と8が抜けたりしないで0から9までが繰り返されていた。


(つづく)