ローレンツ変換をエクセルでやってみる
少し前に見た匿名ダイアリーでこういうのがありました。
anond.hatelabo.jp
これは宇宙船から見ると時間が変わるというのがわからないのかなと思ってブックマークコメントもそんなことを書いたのですが、では実際にどうなんだろうと考えたらよくわからなくなりました。そこでためしに計算してみようとして、面倒なので表計算ソフトを使いました。
まず地球基準で考えます。月までの距離は1光秒で、移動する物体の速度は0.8光測にしてあります。作成したシートでは、ここの値を変えることで他の値が計算されて出てきます。
地球基準 | ||||
移動体の速度:v/c | 0.8 | |||
時間:t | 光の軌跡 | 移動体 | 月 | 地球 |
0 | 0.00 | 0 | 1 | 0 |
0.25 | 0.00 | 0.2 | 1 | 0 |
0.50 | 0.25 | 0.4 | 1 | 0 |
0.75 | 0.50 | 0.6 | 1 | 0 |
1.00 | 0.75 | 0.8 | 1 | 0 |
1.25 | 1 | 1 | 1 | 0 |
地球が基準なので位置は0で、月は1光秒先なので1のままです。移動体は0.25秒あたり0.2光秒進むので、1.25秒で月に到着します。
遅れて発射する光は移動体と同時につくように、0.25秒遅らせて発射。
それをグラフにしたのが下のもの。横軸が時間で、縦軸が距離。単位は秒と光秒。
移動体が地球から月へと移動する後から光が追いかけるのがわかると思います。
次に、これを宇宙船視点で考えて見ます。
移動体基準に変換(ローレンツ変換)
地球時間 | 地球位置 | 光:t' | 光:X' | 移動体:t' | 移動体:x' | 月での時間 | 月の位置 |
0.000 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | -1.333 | 1.667 |
0.417 | -0.333 | 0.417 | -0.333 | 0.150 | 0.000 | -0.917 | 1.333 |
0.833 | -0.667 | 0.500 | -0.250 | 0.300 | 0.000 | -0.500 | 1.000 |
1.250 | -1.000 | 0.583 | -0.167 | 0.450 | 0.000 | -0.083 | 0.667 |
1.667 | -1.333 | 0.667 | -0.083 | 0.600 | 0.000 | 0.333 | 0.333 |
2.083 | -1.667 | 0.750 | 0.000 | 0.750 | 0.000 | 0.750 | 0.000 |
ローレンツ変換すると、位置だけでなく時間も変わってしまい別々になるので、それぞれの時間と場所を求めています。移動体基準なので、移動体の位置は0のままになり、地球や月が動くことになります。
移動体時間で出発の0.75秒後に月に到着して、光にも追いつかれます。緑色にしたマスでは光、移動体、月の時間と位置が同じであることからそれがわかります。
グラフにするとこんな感じです。横軸は移動体での時間で、縦軸は移動体基準での位置。
時間についてもグラフにしてみます。出発時は移動体と光、地球の時間が同じで、到着時は地球ではなく月と同じ時刻になるわけです。地球と月の時間は、約1.333秒ずれていることになります。
こうやってグラフにしてみると、光の速度に近くなると時間の進み方や長さが変わるというのだけでなく、ある場所と別の場所で同じ時刻なのかどうかという同時性も変わることが見てわかるような気がします。
ここで使ったローレンツ変換は、光の速度がどの観測者からみても同じであるという仮定から導かれるもので、特殊相対性理論の前半にそういったことが書かれています。
10月29日追記
最初はローレンツ変換後の位置と時間をバラバラにグラフにしていましたが、これは後でやったように同じグラフにしたほうが正確なので追加します。