Log of ROYGB

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科学とは何か

http://senahideaki.cocolog-nifty.com/book/2008/03/post_68fe.htmlの「瀬名秀明の時空の旅 信じぬ者は救われる」に関して。献本された本に対する書評という形式ですが、そこにかかれている「科学とは何か」ということを興味深く読みました。

私たちが世界と初めて向かい合うときのことを思い出してみましょう。不思議だなと思ったとき、私たちは実験して確かめたいと思う。菊池さんだってかつてはUFOにはまったと本書のなかで語っています。まず興味を持つとき、私たちはその対象がニセ科学かどうかなんてわからないわけです。だからこそいろいろ調べたり、実験したりする。その過程で科学を学んでゆく。

http://senahideaki.cocolog-nifty.com/book/2008/03/post_68fe.html


連想したのが「科学と魔法はどう違うか」というテッド・チャンの書いた文章*1です。アーサー・C・クラークの「じゅうぶんに発達したテクノロジーは魔法と区別がつかない」という言葉を冒頭に引用していますが、科学と魔法は違うんだという主張が書かれています。そして科学と魔法のどちらを使うかによって、SFとファンタジーに分けています。従来SFとされていたものも、この考え方によるとファンタジーになるだろうということも書いています。ただし、これが正しい分類だということではなく、テッド・チャンの考える定義ということのようです。


瀬名秀明の時空の旅 信じぬ者は救われる」に対応して、http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1205593368に『「信じぬ者」と瀬名さんとパライブの頃』が書かれています。

ただ、「科学とは何か」については意見の一致しない部分があり、もしかすると一度きちんと議論したほうがいいのかなあという気もする。僕は瀬名さんに「科学を伝える人」としての役割を期待しているので。
ちなみに、僕自身は、自分が科学者としてきわめて保守的であると思う。

http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1205593368

とは書いてあるものの、基本的な部分では共通するものが多そうです。それは、その数日前に書かれている渋滞に関する研究についてのエントリーからも推察されます。これなんかも当たり前のように思えることを、あえて実験した例のような気がします。

http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1204620156 渋滞の論文が出ました(または相転移現象としての交通渋滞)
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1204861899 数と密度 (渋滞論文の話の続き)
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1205048385 さらに渋滞の続き


ところで“科学と無関係なものを”という言葉が「瀬名秀明の時空の旅 信じぬ者は救われる」のコメント欄に書かれています。前後の文章で言わんとしていることから離れて、「科学と無関係なもの」というのは世の中にあるのだろうかと考えました。全てが科学で解明できるなどと根拠も無く思うのは科学的な態度とはいえませんが、これは科学の対象ではないと簡単に断定することも同じように科学的な態度から遠いように思います。
あらゆる疑問に対して、科学的なアプローチは可能でしょう。というよりは、科学の前身としての自然哲学が、自然に対するあらゆる疑問を対象にして発達したものだからでしょうか。

*1:SFマガジン2008年1月に収録