ストーリーとノヴェル
http://d.hatena.ne.jp/REV/20080430/p1の「ストーリーとプロットの違い - REVの日記 @はてな」を読んで連想したこと、それは短編を長編化するということ。具体的にはアシモフの「バイセンテニアル・マン」と、それをシルヴァーバーグが長編化した「アンドリューNDR114」が頭に浮かびました。
「バイセンテニアル・マン」は約60ページで、「アンドリューNDR114」は350ページ以上。それでいてあらすじにすれば全く同じといってもいいくらいです。
その手法について、「アンドリューNDR114」の訳者あとがきで説明されています。通常は、長編化にあたって新しいエピソードが足される場合がほとんどだというのに続いて、こう書かれています。
ところが、本書ではシルヴァーバーグ独自の発想といえるものはほとんどない。すべてはアシモフの原型中編に萌芽的に含まれていたものであり、シルヴァーバーグはそれを開花させただけといえる。極端な話、シルヴァーバーグはアシモフの1行を4行に書きのばしただけなのだ。
しかし、それで作品の密度が薄くなるどころか、逆に厚みがまして、感動が深まっているのだから感心せざるを得ない。もちろん、原型中篇にそれだけの内容がぎっしりつまっていたからだが、アシモフのそっけない記述を、会話と描写で映画的な場面にふくらませるシルヴァーバーグの才能にも舌を巻く
――余談だが、ストーリーは作れるのに、描写や会話がうまく書けないという作家志望者は、本書とアシモフの原型中篇を丹念に読みくらべるといい。きっと勉強になるはずだ。では話を戻して――(略)
さらにいうなら、アシモフが七行ですませた月のエピソードを脹らませ、アンドリューの性格の変化を無理なく描きだした点も、シルヴァーバーグの手柄だろう。
誤解を恐れずにいえば、アシモフは語り部(ストーリー・テラー)であり、シルヴァーバーグは小説家(ノヴェリスト)なのである。
このあと、英語で短編は「ショートストーリー」と呼ぶのに対して、長編は「ノヴェル」と呼ぶように違う物であると続いています。
他には同じ話の長編化ではないけれど、昔のマンガと今のマンガを比べるとだんだん話が長くなってきているのも連想しました。
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