Log of ROYGB

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ひとつの石

全能の神の存在を否定する逆説として、こんな問題があります。

  • 全能の神は、自分でも持ち上げられないような石を創造することはできるか?

もし、創り出すことが出来ないとすれば全能でないというのはすぐにわかりますが、出来るとしても全能ではないということになるのがこの問題の面白いところです。
自分で持ち上げられないような石を創ることが出来たとしたら、今度は「持ち上げることが出来ない石」が存在することになり、やはり全能ではないということになるからです。


神様が自分では持ち上げられない石が存在するかどうかは別として、どのくらいまで大きな石を考えることができるでしょうか。
実際に存在するものとしては、オーストラリアのエアーズロックがひとかたまりの石のようですが、これはだいぶ大きいです。空に浮かぶ月はどうでしょう。月の場合は「石」と呼ぶには抵抗がありますが、まあよしとします。
月が良いのなら地球もいいのではと、どんどん想像は広がります。地球じゃなくて木星なら太陽系最大の惑星です。主成分はガスなので持ち上げるには苦労しそうですが、それなら月でも苦労するでしょう。
太陽そのままだと、あまりにも石のイメージからはなれるので、太陽を冷やして固めたものを想像します。これで太陽系最大の石になるはずです。
太陽よりも大きな恒星を使えば、もっと大きな石もできるし、複数の石を使うこともできます。銀河系の全ての星を使って石をつくったら、どのくらいの大きさと重さになるでしょうか。

この話をどこまでも突き詰めていくと、宇宙に存在するすべての物質とエネルギーを集めて一つの石にしたものが、考えられうる最大の石ということになります。


宇宙の全てを一つの石にする場合に問題になることがあります。一般相対性理論によれば、あまりに質量の大きな物質は重力が強くないりブラックホールになってしまうからです。ブラックホールは石と呼べるでしょうか。
ブラックホールを石だと認めない場合は、その寸前に最大の大きさがあるはずです。中性子星と呼ばれる星が、ブラックホールになるには少し質量が足りない星とされています。ぎりぎりブラックホールにならない範囲で最大の中性子星を考えれば、それが最大の石であるとすることもできます。



(追記)
論理による考察も面白いのですが、すでに沢山なされているのでそれらに無い新しい視点を提供するのは難しそうです。
デカルトの観点というのが面白いというか、論理的には正しいのではと思います。


「全能の逆説」は、「AかつBが成立しないから全能ではない」ということから成りたっているので、これは「全能ならばAかつBが成立する」ということを意味する。AとBは相互に相反する現象なので、Bを非Aとすれば、「全能ならばAかつ非Aが成立する」となる。これを否定するのであれば、前提がくつがえされるので「全能の逆説」そのものが成立しない。
これを『「全能の逆説」の逆説』という。


参考リンク
wikipedia:全能の逆説