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はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

磁気と氷の結晶

http://mainichi.jp/select/today/news/20090420k0000e040074000c.htmlの「冷凍技術:臓器保存から1次産業にも活用へ 千葉の企業 - 毎日jp(毎日新聞)」から。

幹細胞や臓器などの凍結保存に使う最先端の冷凍技術を使い、国内外の1次産業を支援する取り組みが進んでいる。解凍後も生と変わらない味を保つという性質を生かし、採れたてを産地で加工し、小売店や消費者への直接販売などを通して生産者の収入増を目指す狙いだ。

 取り組んでいるのは冷凍技術を編み出したベンチャー企業「アビー」(千葉県我孫子市)の大和田哲男(のりお)社長(65)。技術は国立成育医療センター、慶応大、国立天文台など国内外の研究者らとの共同研究により、再生医療で使う幹細胞や受精卵、臓器などの凍結保存のために開発された。

 一般的な凍結法では対象物に含まれる水分が氷の結晶を作って細胞を壊してしまうが、同社の技術は温度を下げる際、磁場などをかけることで氷の結晶を微細にして細胞の破壊を防ぎ、酸化や変質を抑える。これにより味や食感を保つことができ生野菜や果物、牛乳、生ガキも凍結・解凍できるという。

http://mainichi.jp/select/today/news/20090420k0000e040074000c.html


紹介されていた会社のページが見つかりました。記事にあった冷凍技術は「ABI CAS とは?」(http://www.abi-net.co.jp/pro_cas.html)で説明されています。

 「細胞が生きている」。CASフリージング・チルド・システムは、従来の『冷凍』システムとは異なる理論体系から開発された全く新しい『凍結』技術です。従来の冷凍食品で指摘されていた、チルド食品と比較しておいしくない、食感が悪くなる、冷凍臭が気になる、退色して自然の素材の美しさが失われる、また添加物を使用せざるを得ないなどの問題が解決します。
 CASは、食の世界の常識を変えていきます。
※「CAS」の語源
Cells Alive System (細胞が生きている)という意味。
凍結しても細胞が破壊されず、解凍後に鮮度が生き生きとよみがえることから名づけました。

http://www.abi-net.co.jp/pro_cas.html


従来の急速冷凍とは異なり、過冷却にさせることで氷の結晶が出来るのを押さえているようです。過冷却という現象は確かに存在するし、氷の結晶が冷凍食品の食感を落とす原因の一つであることも確かでしょう。急速冷凍も、そういった理論から出てきた技術だったと思います。


もうひとつ検索してTech総研にある「食品も細胞も蘇生させる「魔法」を作りたい」(http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001201&__r=1)も見つけました。

 CASという商品名は「Cell Alive System」、すなわち細胞蘇生システムを略したもの。肉や魚介類などの生体を、凍らせる前の状態に復元できるように冷凍するという、画期的な装置だ。その「なぞ」をCASの考案者である大和田哲男社長に聞いてみたが、大和田氏は笑顔で「わかりません」と答えるばかり。

「もちろんCASの機能について説明することはできますし、装置がどのように作動するかということもお話しできます。しかし、CASが何でこのような効果を得られたかということは、本当にわかっていないんですよ」
 論の部分は解明されていないが、証拠の部分についてはすごい。アビーではCASを実装した冷凍装置で凍らせたさまざまな食品を、常に大量にストックしている。その中から解凍した枝豆、サンマ、大根おろしなどを食べさせてもらったが、その風味はまさに生の食材そのものだった。

http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001201&__r=1


装置は存在するけれども、仕組みを説明する理論的な裏づけが無いというのも面白いです。後の方に出てくる“日本の学識者からは受け入れられなかった。”とか“次に目をつけたのはアメリカの研究機関”というのを読むと「ニセ科学」という言葉が頭に浮かびます。この装置がニセ科学だと断定するわけではありませんが、説明などに似た印象を受けます。でもまあ『「違い」を把握していないのならば「似ている」という印象に大きな意味はない』(http://d.hatena.ne.jp/lets_skeptic/20090220/p1)という意見もあるし、似ていることは同じであることとイコールではありません。
もう少し「ニセ科学」っぽい部分を引用してみます。

 この装置の作動はシンプル。冷凍装置内の磁場を自然界と同じように保つというのが基本だ。庫内に水を張ったシャーレを入れて装置を作動させると、水面が極めて微妙に脈動するのが見て取れる。自然界における磁場の流れを再現・増幅してやるとなぜこのような現象が起こるのかは、まだすべて解明されてはいない。が、この振動が生体の細胞を、組織を破壊することなく中心から周辺部まで均質に凍らせる作用をもつことは明白だという。
 大和田氏がこの仕組みを考案した背景に、科学的な理論の裏付けはなかった。生命にパワーを吹き込んでいるものは何だろうかと漠然と考えていたことが、そもそもの発端だったという。

http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001201&__r=1


自然界における磁場の流れや生命にパワーといった用語がますますニセ科学を思わせるのですが、冷凍された物に違いがあるのならば何らかの効果があるとは言えるのか。でもまあ生命にパワーを吹き込んでいるという裏付けは無いようにも思いますが。


いろんな意味でもっと注目されてもいいのではと考えました。