Log of ROYGB

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センセーショナルなタイトルの価値

朝日新聞の記事の『asahi.com朝日新聞社):「命の値段」、非正規労働者は低い? 裁判官論文が波紋 - 社会』に関して。

パートや派遣として働く若い非正規労働者が交通事故で亡くなったり、障害を負ったりした場合、将来得られたはずの収入「逸失利益」は正社員より少なくするべきではないか――。こう提案した裁判官の論文が波紋を広げている。損害賠償額の算定に使われる逸失利益は「命の値段」とも呼ばれ、将来に可能性を秘めた若者についてはできる限り格差を設けないことが望ましいとされてきた。背景には、不況から抜け出せない日本の雇用情勢もあるようだ。

http://www.asahi.com/national/update/0917/OSK201009170090.html


タイトルにある「命の値段」というのは人目を引くものの、いささかセンセーショナルに堕している感があります。記事本文には書いてありますが、得られたはずの収入にたいする逸失利益に関する話です。死亡事故などの賠償金には、それいがいに苦痛や苦しみに対する慰謝料というものもあります。
だいぶ前のことですが、海外での交通事故の賠償金が日本でのものよりもかなり低いというのを読んだ記憶があります。たしかこれも新聞記事だったと思うのですが、外国といっても発展途上国ではなく北欧などの福祉の行き届いた国のこととして紹介されていました。福祉が行き届いている故に、高額の賠償金は必要無いからという理由だったように思います。


古い記憶だけに頼るのも何なので、そういう事例が無いかインターネットで少し探してみましたが、記憶にある北欧での話は見つかりませんでした。そのかわりといっては何ですが、ニュージーランドとオーストラリアの話が見つかりました。以下に引用して紹介します。一部を強調表示してあります。


ニュージーランドの場合:年金等について ミーチャンハーチャン」より。

NZにいる海外旅行者でも交通事故にかかる医療費は無料です。山での遭難救助も無料です。勤務中の事故で休職中は雇用者が8割、 ACCが2割負担で給与と同額が支給されます。一方で交通事故で無くなっても日本のような高額な損害賠償金は得られません。従ってアメリカのアンビュランスチェーサーと言われるような弁護士の仕事はありません。

http://yoiotoko.way-nifty.com/blog/2009/05/gm-1de4.html


JTB Oceania オプショナルツアー&ミールクーポンに関するご案内(ニュージーランド版)」より。

ニュージーランドの補償制度について>
ニュージーランドでは、事故で死亡/傷害を負った場合、賠償・補償を求める裁判を起こす事が出来ません。その代わり、ACC( Accident Compensation Corporation、事故補償公社)と呼ばれるシステムが様々な形で被害者のケアをします。
ACCはニュージーランド国内で発生した事故に起因する傷害を対象としており、ニュージーランド国内での治療費用を補償、怪我からの回復期間のヘルプや、時によっては治療期間の収入を補償します(ニュージーランド国内で収入があり、ニュージーランドで納税している場合)。 ACCシステムの一部は、ニュージーランド居住者に限らず、ニュージーランドを訪問されている方々にも適用されます。

http://www.jtb.com.au/oceania/enjoy/readme_nz.php


ニュージーランドの場合は、ACCという事故補償公社が保障を行うようになっているようです。全員がACCという保険に加入しているというような感じでしょうか。日本の自動車事故の場合のように任意保険に入っていないとか、ひどい場合は自賠責にも加入していないなどという心配は無さそうです。一方で金額は不明ですが、日本よりも損害賠償金は低めなようです。
さらに“事故の被害者は傷害・損害に対する賠償責任を問う訴訟を起こす事はできません。”という記述もリンク先にあります。


次にオーストラリアの場合。
シドニーの死亡事故 ― 現地法との間に割り切れなさ ―」より。

日本人が海外で交通事故を起こし、被害者も日本人で、日本国内で提訴された場合、賠償問題では原則として現地の法律が適用される。
 このような場合、どこの国の法律を適用するかについて、日本は現地の法律を採用するという方式(これを「不法行為法主義」という)をとっているからだ。
 Eさんの息子さんが事故にあったオーストラリア・ニューサウスウェールズ州シドニーや首都キャンベラがある)の場合、現地の法律には、人を死亡させても、逸失利益(将来の収入を失った損害)を賠償するという考え方がない。
 また遺族の慰謝料を認めるのも例外的で、その結果、遺族に支払われる補償金の額は、日本国内で起きた死亡事故のケースに比べ、格段に低い金額になってしまう。
 Eさんの場合、事故の場所がもし日本であったなら、約7000万円の補償が得られるのに、現地の州法が適用されると、せいぜい800万円前後の補償金しかうけられない。
 厳密に査定すれば、金額はもっと下がる可能性もある。

http://www.kamo-law.com/sidonii.htm


逸失利益を賠償するという考えがないというのは驚きです。遺族に支払われる金額が日本なら7000万円のところが800万円というのは、9分の1以下です。
オーストラリアの場合に、ニュージーランドのACCに相当するものがあるのか調べたのですがわかりませんでした。