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流れるな、わが涙

人が悲しいときに泣くのはどうしてだろう。
涙というものは、目が乾かないように水分を補給し、ゴミが入ったら洗い流すというのが主たる役目と考えられる。そういった点で、唾液や鼻水と同様な生理現象の一つでしかない。
しかし、目にゴミが入ったわけでも涙が出る場合がある。それが悲しいときだ。あらためて、「悲しい」という感情と「涙」がどうして結びつくのかと考えてみると不思議な感じがしてくる。


ひとつ考えられるのは、目にゴミが入ったときの痛みとそれ以外の痛みの混同だろうか。目が痛いのはゴミが入ったからだから涙を流す必要がある。その涙を流す仕組みが、目の痛みだけでなく他の痛みにも反応してしまうという可能性はありそうに思われる。だから目とは関係ない痛み、たとえばタンスの角に小指をぶつけたときの痛みで涙が出てしまう。


この痛みに反応して涙がでる仕組みが、肉体的な痛みだけでなく精神的な痛みにまで反応するようになった。とすると、悲しいときに涙が出ることへの説明ができるのではないだろうか。これと似た現象が唾液でもあり、実際になにかを食べないで想像しただけでも口に唾があふれてくる。


涙の場合は単に想像の結果としてだけでなく、パブロフの犬の実験におけるベルの役割も果たしているように思える。ベルの音とともに食事を与えることで、ベルの音だけでも唾液の分泌が多くなるというのがパブロフの犬の実験だが、涙の場合は分泌された涙によってさらなる涙の分泌が促進される。涙が悲しさの結果としてのものだけでなく、涙によって悲しい感情が引き起こされることもある。他人の涙によって自分の感情が影響を受けて泣いてしまう「もらい泣き」という現象すらある。

もらい泣きの場合は、悲しいから泣くのではなく泣くから悲しい。