Log of ROYGB

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「宇宙をプログラムする宇宙」を紹介するエントリー

読みながらSFの設定に使えそうだと思ってしまうような内容ですが、れっきとした科学解説書です。情報とは何かといった基本的なことからわかりやすく説明しています。ガロンやパイントといったアメリカで使われる体積の単位が2進体系であることや、棒を使って記録する場合の情報量と精度の関係についてなど。棒を使った記録というのはhttp://d.hatena.ne.jp/michiaki/20060709#1152378886の「棒メディアの可能性」で書かれているようなことです。
第2章の「計算」では人類史上初のコンピュータとして「石ころ」を挙げているのを読んでhttp://d.hatena.ne.jp/ROYGB/20070205#keisanの「意識と計算」を思い出しました。第3章「計算する宇宙」ではタイプライターを叩くサルとコンピューターを叩くサルを使ってデータとプログラムの違いを説明しています。第4章の「情報と物理系」にはマクスウェルの悪魔が登場。

第7章の宇宙というコンピュータでは量子コンピュータの考え方を発展させて、全ての量子の相互作用を情報のやりとりとして考えることが出来るとしています。

量子コンピュータ上での宇宙のシミュレーションは、宇宙そのものと区別がつかないのだ。
(「宇宙をプログラムする宇宙」192ページより引用)


逆にいうと、宇宙をシミュレートするには宇宙と同じ大きさの量子コンピュータが必要で時間も同じだけ必要になるということです。それじゃあシミュレーションではなく実験のようにも思いますが、そういったことも本文中にかかれています。

量子コンピュータでは、アナログ計算とデジタル計算の区別が無い。
(「宇宙をプログラムする宇宙」190ページより引用)


193ページではアシモフのSF短編「最後の質問」を紹介しています。最先端の科学がSFみたいだったり、SFが部分的にせよ先端科学を予測しているのは興味深いです。SFだけに限ったでもありません。作家ボルヘスに会ったときの言葉としてこんなことも書かれています。

自分が量子力学の研究に影響を受けたことは無いが、物理法則の方が文学作品のアイデアを真似ていることには驚かないと言った。
(「宇宙をプログラムする宇宙」130ページより引用)


内容とは関係ない部分ですが、以下を読んで喜ぶSFファンというのも多そうです。「42」が出てくるからだけですが。

リストに載せるべき複雑性の尺度の数は三一から四二に増えた。
(「宇宙をプログラムする宇宙」235ページより引用)


最後に、あえて難点をあげるとしたら縦書きに数式や英字が横向きで挿入されるのが読みにくかったです。全部横書きにした方が読みやすいのではと思いました。あと38ページで1メートルを北極から赤道までの長さの10万分の1としてるのは単純なミスで、1千万分の1でしょう。



宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?

宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?