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浮気SF

浮気を題材にしたSF小説があります。冒険小説や戦争小説がSFになり、昔話をSFにした話もあるように浮気の小説をSFにしたものです。

ひとつめは小松左京著の「ダブル三角*1」です。これはウーマンリブが極度に発達した未来の日本が舞台です。主人公の女性は結婚していますが、仕事はしておらず自由な時間を好きにすごしていますが生活に不満もあります。この時代の女性は余暇に体を鍛えたりしていて、仕事に追われる男性よりも肉体的にも強くなっています。主人公の女性も鍛え上げた体をしているのですが、夫は軟弱な肉体で、彼女を満足させることができません。浮気するにもろくな男がいないし、などと友人に愚痴をこぼしていたらある病院を紹介されます。そこで新式の性転換手術をすれば簡単に男になることができ、もとに戻すこともまた簡単なのです。
主人公は性転換をしてこの時代には珍しいマッチョな男として相手に不自由せず浮気を堪能します。そのうちにこの時代では珍しい華奢な女性に出会って心を惹かれ、と話は続きます。最後まで読むとタイトルの意味がわかりますが、簡単に性転換が可能な未来社会での夫婦と浮気はややこしいものです。


もうひとつは著者は同じで「釈迦の掌*2」、今度は妻に隠れて浮気をしようとする夫の話です。主人公は非常に美しい妻がいるにもかかわらず、むしろだからなのか非常に個性的な顔のはっきり言うとブスな女性を愛人にします。しかし日常生活のほとんどを妻に管理されていて浮気する時間をとることができません。そこでタイムマシンなどを扱う会社を訪ねて相談します。そこで時間移動は何かと制約があるので難しいからと別の方法を提案されます。それは小型の瞬間移動マシンを使って二箇所に同時に存在するように見せる方法です。1秒間に数十回も瞬間移動を繰り返すことで、どちらの場所にも存在しているように見えるので自宅にいながらにして愛人宅で浮気を楽しめるという寸法です。
この話も皮肉なラストを迎えますが、話の構造としては海外のロマンチックSFをちょっと連想させたりもします。


記憶にある限りでは浮気を題材にしたSFで思いつくのはこの2作だけなので、浮気SFと呼べるほどのジャンルでは無いかもしれません。海外作品で年をとった昔の恋人とその若いクローンのどちらを選ぶかで悩む話はあったかも。