朝日新聞の記事で、死者を出した交通事故を起こしたドライバーの呼び方について書かれていました。
逮捕されていない事故の加害者をどう表記するか。
朝日新聞は事故直後の20、21日付紙面(東京本社最終版)では、呼称を「容疑者」とせずに「さん」とし、実名で報じた。逮捕されていない場合などは通常、「さん」などの呼称で報じている。
「なぜ容疑者と呼ばない」臆測生んだ メディアの課題は:朝日新聞デジタル
逮捕されなくても何らかの罪状での容疑があれば容疑者。この記事でも警察が何容疑で話を聞くかは書いていないけど、それが異例。通常は○○容疑で捜査中とか書く。
少し気になったので、過去の朝日新聞の記事がどうなってるのかを調べてみました。
検索ワードとして「回復を待って」を使って見つかった記事から死亡者が出ている交通事故を選びました。
歩道に車、7人負傷 運転の79歳「お茶を吐き驚いて」:朝日新聞デジタル
1月の記事。“署は、アクセルとブレーキを踏み間違えたとみて自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで調べる。男性も搬送されており、回復を待って詳しく事情を聴く。”
2019/04/27 12:08
これは今年1月の事故のニュースです。自動車運転死傷処罰方違反の疑いで調べるとなっているので容疑者ですが、記事中では名前ではなく男性と書かれています。新聞記事で男性となっているのは被害者などにも使われているものなので、名前のさん付けに相当するのではと思います。容疑者扱いだと男となるので。
元東京地検特捜部長が運転する車にはねられ、男性死亡:朝日新聞デジタル
2018年の記事。“けがの回復を待って自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の疑いで事情を聴く。” 呼び方は容疑者ではなく○○弁護士だけど、容疑があることは書かれている。
2019/04/27 12:14
これは2018年2月の事故。これも容疑者呼びではありませんが、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の疑いで事情を聴くとなっています。
トラック運転手、直前に通話か 中央道の多重事故:朝日新聞デジタル
2017年の記事。“県警は回復を待って事情を聴く方針。”の後に“自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)などの容疑で捜査を進める。”とある。
2019/04/27 12:17
2017年9月の事故。トラック運転手は名前にさん付けされています。
78歳運転の車、歩道突っ込み女性2人死傷 和歌山:朝日新聞デジタル
2017年の記事。これは“県警は回復を待って事情を聴く。”だけで容疑は不明で呼び方もさん付け。
2019/04/27 12:18
2017年4月の事故で、これは呼び方がさん付けであるだけでなく、県警は回復を待って事情を聴くだけで何の容疑なのかが書かれていません。
ここまでの4つの記事では容疑者呼びは使われていないので、最初の記事の逮捕されていない場合は通常「さん」などの呼称であるというのは裏付けられました。
しかし4つのうち3つでは警察が何かしらの容疑で調べるということも書かれています。なので今回の池袋の事故の記事のように、警察が何の容疑で調べていることを書いていない記事というのは少数例であることもわかります。
これは警察が発表していないからという理由なんでしょうか。でも発表が無くても記者が質問したりはできるはずなので、新聞社がわの判断で何容疑かを記事に書かないのでしょうか。
あらためて最初の記事を読むと、事故の加害者というのは断定しています。容疑者と呼ぶのをためらうのに、加害者と決め付けるのはいいのだろうかというのもちょっと気になります。
また逮捕されるかどうかは刑事訴訟法で逃亡や証拠隠滅の恐れがあるからと書くのなら、容疑の有無と逮捕の有無に直接的には関係ないことにもなるわけで、逮捕されていないから容疑者呼びしないというのも不思議です。
これは新聞社の規則がそうなのかもしれませんが、そうするとタイトルに書いたように死亡事故を起こしても入院するなどして一時的にでも逮捕をまぬがれれば容疑者と呼ばれないということになります。同じような死亡事故でも現行犯逮捕されたら容疑者呼びで、入院したらさん付けになるとしたら、これは変なのではないかなあと思いました。