脱出速度以下での脱出
ブラックホールに関する話。
ブラックホールの周囲には非常に強い重力場が作られるため、ある半径より内側では脱出速度が光速を超え、光ですら外に出てくることが出来ない。この半径をシュヴァルツシルト半径と呼び、この半径を持つ球面を事象の地平面(シュヴァルツシルト面)と呼ぶ。また、この天体を「ブラックホール」(黒い穴)と命名したのはアメリカの物理学者ホイーラーである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB
引用したのはウィキペディアのブラックホールの項目からですが、ここに書かれている脱出速度が光速を超えるので光も外で出てくることが出来ないというのには疑問があります。
脱出速度についてもウィキペディアから引用します。
第二宇宙速度(脱出速度)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B1%E5%87%BA%E9%80%9F%E5%BA%A6
地球表面から慣性飛行を行って、地球の重力を振り切るために必要な最小初速度の大きさ。第一宇宙速度の倍となり、約 11.2 km/s。太陽を回る人工惑星になるためには第二宇宙速度が必要である。地球の重力圏を脱出するという意味で脱出速度とも呼ばれる。
慣性飛行を行ってという部分が重要です。ボールを投げた場合とか、大砲の弾のように最初の速度だけによって脱出するための速度というのが脱出速度なのです。ロケットのように途中でも加速できる場合は、脱出速度以下であっても脱出可能です。
ものすごく長いハシゴを1段1段登ることを考えれば、速度によらずに脱出することがイメージしやすいでしょうか。どんなにゆっくりであっても、ハシゴを1段登ることで1段分高い位置に移動して、時間さえかければどこまででも登っていくことが可能です。
では、ブラックホールのように脱出速度が光速度を超えている場合でも、光の速度以下で脱出することはできるのでしょうか。
結論から言うと、出来ないとなります。脱出速度の問題ではなく、一般相対性理論の問題になってしまうからですが、その詳細は理解していません。
しかしながら、シュバルツシルトの式と脱出速度の式の類似性は、無関係とは信じられない程でもあります。
シュバルツシルトの式
脱出速度の式
この式の脱出速度vを光速度cとおいて変形してみます。
両辺に2をかけて
両辺をmで割って
両辺にRをかけて
両辺をC^2で割って
とこうなると、まるでシュバルツシルトの式です。
だからといって、シュバルツシルトの式が脱出速度が光速という仮定から導き出せるというわけではではありません。それに脱出速度が光速になったというだけでは脱出が不可能とはいえないというのことは、すでに書いた通りです。
(追記)
以前に同じ内容で書いていました。
ブラックホールのお茶漬け