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運動量、運動エネルギー

人力検索はてなの質問http://q.hatena.ne.jp/1157582240に関して。

運動量の方程式 運動量=質量×速度=mvとありますが納得いきません。そもそも質量と速度は対等なものなのでしょうか。500kg×1km/sと1kg×500km/sは本当に等しいのでしょうか。エネルギーの式E=1/2mvvでは
速度の方に重点が置かれています。私はいつもこの両式の狭間で悩んでいます。


同じ質問者がhttp://q.hatena.ne.jp/1157500945でも同じようなことを質問しています。

静止している100kのボートに質量60kの人が5m/sの速度で飛び乗るとボートはどのくらいの速さで動き出すか。運動量保存の法則によりV=mv/m+M=60×5/60+100=1.88/sとなる。しかしE保存法則からE=750からE=283と変わる。なぜなのか


運動量とは何かを理解するのは難しいと思います。エネルギーのように、運動量以外にも変化の前後での合計が変化しない保存則はありますが、運動量はエネルギーとは別のものです。これが温度なら、温度が同じでも物質の量や比熱の違いでエネルギーの量が違うのもわりと直感的に理解しやすいと思います。それに、違う温度の物質を混ぜた場合などの温度は、エネルギーの総量から決ります。


運動量=質量×速度ですが、他の表し方もあります。例えば2キログラムの物質に3ニュートンの力を4秒間加えた場合の速度は(3×4)/2で秒速6メートルになります。このときの運動量は2×6で12キログラムメートル毎秒になります。
速度をv、質量をm、力をf、時間をsで表した場合の式はv=fs/mです。運動量はmvですが、速度vをfs/mで表すとこうなります。

mv=m \frac{fs}{m}=\frac{mfs}{m}

分子と分母に同じmがあるので約分すると無くなります。

mv=fs

つまり運動量mvは、fとsをかけたものでも表せます。質量とは関係なく、力と時間で決るのです。そう考えると運動量というものが多少は直感的に理解できるのではないでしょうか。


力と時間で考えると、エネルギーと比例しないのも理解しやすいのではないでしょうか。例えば、いくら力をかけても物が動かなければ物理で言う仕事にはなりません。壁をいくら押しても、壁が動かなければエネルギーに変化はありません。
同じ力を同じ時間加えても、加えた対象によって伝わるエネルギーは変わるわけです。上で書いた3ニュートンの力を4秒間加えた場合でも、対象が2キログラムではなく、4キログラムなら速度は秒速3メートルになります。



運動エネルギーの式、E=1/2(mv^2)について考えると不思議なことは他にもあります。2つの同じ重さmで、速度vも同じですが逆方向の物質が衝突して静止した場合に放出されるエネルギーは以下の式で計算できます。

\begin{eqnarray}E&=&\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}mv^2\\&=&mv^2\end{eqnarray}

ところが、片方が静止していてもう片方の速度が2vだった場合はこうなります。

\begin{eqnarray}E&=&\frac{1}{2}m(2v)^2\\&=&\frac{1}{2}m4v^2\\&=&2mv^2\end{eqnarray}

これは最初の場合の2倍のエネルギーです。では、最初の場合で、視点を片方の物質と同じ速度で移動させた場合はどうでしょう。移動している視点からは、片方が静止して、もう片方の速度が2倍になったように観測されます。その場合には2番目の式のようにエネルギーは2倍になるのでしょうか。静止した観測者と、移動した観測者で違う量のエネルギーが観測されるなんていうことは、ありえるのでしょうか。

この移動する観測者を使えば、運動エネルギーが無限になることも考えられます。静止している状態では、周りにある物質の運動エネルギーは0ですが、移動した観測者から見たら1/2(mv^2)のエネルギーを持っていることになります。
視点を移動させるのには、周りになにがあるかは関係無いので、それこそ無限に物質がある状態を考えると無限の運動エネルギーが発生することになります。観測者が移動するだけで、宇宙の全ての物質の運動エネルギーが増加するのです。
この場合には、エネルギー保存の法則も働かないように思えます。この方法で、無限の運動エネルギーを手にいれ、それを別の電気エネルギーなどに変換することで無限のあらゆるエネルギーを手に入れることが出来るのでしょうか。


まあ、結論を言うと出来ないのですが、なぜ出来ないのかを考えるのも面白いのではないでしょうか。