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家族の承認による脳死移植

日本の場合は15歳未満では臓器のドナーとなれませんが、アメリカなどでは移植が行われているようです。この場合、本人の意思確認はどうなっているんだろうと思いました。アメリカやいくつかの国だと、本人の意思が明確では無い場合には家族の承認で移植が出来るようです。
でも、家族が勝手に決めてしまっていいんだろうかというようなことを思います。


少し前に、信仰上の理由から輸血を拒否する両親の意思に反して子供に輸血をしたというニュースがありました。

東日本で2008年夏、消化管内の大量出血で重体となった1歳男児への輸血を拒んだ両親について、親権を一時的に停止するよう求めた児童相談所(児相)の保全処分請求を家庭裁判所がわずか半日で認め、男児が救命されていたことが14日、分かった。

 子供の治療には通常、親の同意が必要で、主治医は緊急輸血が必要だと両親を再三説得したが「宗教上の理由」として拒否された。病院から通報を受けた児相は、児童虐待の一種である「医療ネグレクト」と判断した。

http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031401000512.html


これは、子供の治療であっても家族が勝手に決められないというように理解することもできます。ちなみに成人の場合は、本人の意思に反して輸血をしたことによる損害賠償の訴えを認める判決があるので、本人の意思を尊重すべきだという法律上の判断がなされているようです。本人の意思ならよくて、家族の意思では駄目だということです。


脳死による移植の場合も、本人の意思と家族の意思を同じに扱うことはできないんではないかなと考えたりもします。
もうひとつ問題だと思うのは、脳死と診断されてから意識が戻ることもまれにあるということです。以前にも紹介したのですが、海外旅行中に倒れて病院で脳死と判定された日本人の話を引用します。

突然、視野が激しく揺れてゆがみ、異常な恐怖感を覚え「これはいかん!」と意識の中で叫んだが声にはならなかった。A氏は失禁し倒れた。すぐに救急車で市内の総合病院に運ばれ、救命治療が施された。症状から脳出血が疑われたが、検査の結果は脳梗塞であった。ICUに移り意識のないまま生命維持のための諸手当がなされていたが1週間後、種々の検査が行われ、主治医と他の医師が協議して出した結論は『脳死』であった。この判定が下されると病院側はそれ以降積極的な治療をしない。

 この間に日本から駆けつけたA夫人とご子息は、心臓が動いているにもかかわらず脳死を宣告されたことに納得ができず、保険会社が派遣した日本人医療コーディネーターに相談した。経験からアメリカ・カナダの場合、日本の『脳死』判定より基準が厳格でないような印象があるが、この点は専門家の研究に任せるとして、A氏を植物状態と考えているご家族の日本に運びたいとする希望は、保険会社として理解できるものであった。保険会社の提携している医療アシスタンス会社の医師による容態の確認によると「脳の神経細胞が壊れ、脳の機能が停止して不可逆的であるが、このまま生命は維持する。」との説明であった。慎重に検査と検討を重ねた結果、日本まで医療搬送しても途中で生命維持が難しくなる可能性は極めて少ないとの結論になった。

 これに基づき、3日後、保険会社の手配でパラメディック2名と薬剤師の搬送チームによりA氏を救急車でバンクーバー国際空港まで運び、そのまま代理通関でストレッチャーのままチャーター機に搭乗させた。途中アンカレッジ、ハバロフスクで給油して大阪(伊丹)空港まで搬送した。そこからは寝台車でご自宅近くの病院まで運び A氏を入院させた。なお、ご家族はチャーター機には余裕がなく乗れないため別便にて帰国された。

 日本の主治医の先生は、「現段階で脳死とはいえないと考えるが、意識は戻らないかもしれません。取り敢えず2週間が山ですね。」といわれた。

 ところが、約2ヶ月後、医師や看護師による懸命の治療と家族の昼夜の看護が功を奏したのか、A氏の意識は戻った。そして半年後、重い障害は残ったものの退院し、自宅に戻り車椅子を使用しながらではあるが現在も静養されている。

http://www.faminet.net/sakai/no9.html


子供の場合でも同じようなことはあります。さらに子供の脳死判定は大人よりも難しいのです。脳死から心臓死までの期間が大人に比べて子供の場合は長いとか、痛みの刺激に反応するといったようなことがあるからです。
子供の脳死判定が難しいということを抜かしても、本人の意思の確認の問題はあります。大人が本人の意思で、脳死による臓器の提供を認めることはまあ問題ないのではと思います。たとえ、脳死から意識を取り戻す確率がほんの僅かながらあるとしても、脳死による臓器の提供の意思を示すことは本人の自由でしょう。
でも、脳死になった場合の臓器の提供を本人ではなく家族が決めてしまうのは良くないのではと思います。



参考リンク
小児脳死判定後の脳死否定例 http://www6.plala.or.jp/brainx/recovery3_15.htm
脳死 臓器移植法改正を考える 脳死移植, 心臓移植, 生命倫理 http://www.lifestudies.org/jp/ishokuho.htm
「子どもの意思表示を前提とする臓器移植法改正案の提言」森岡正博・杉本健郎(生命学ホームページ) http://www.lifestudies.org/jp/moriokasugimoto-an.htm
臓器移植法改正、急ぐな=大場あい(科学環境部) https://my-mai.mainichi.co.jp/mymai/modules/weblog_eye103/details.php?blog_id=474