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静止衛星と軌道エレベータと遠心力

リンゴは落ちるのに月が落ちてこないのはなぜだろう。というのはニュートン万有引力を発見するきっかけになった逸話として出てきますが、どうも後世の創作のようです。しかしリンゴが地球に引かれて落ちるのならば、月も同じように落ちてくるのではないかという疑問には考える意味があります。


月は地球の周囲を回っていて、回ることによる遠心力が引力と同じになっているので落ちてこないというのがおおまかな説明になります。では、リンゴも月のように地球を回って落ちてこないようにできるのでしょうか。
リンゴを手で投げるくらいではすぐに落下してしまいますが、空気の抵抗が少なくなる上空100キロメートルくらいでロケットに乗せれば地球を周回するようにすることもできます。だいたい速度が時速7.9キロメートルになれば遠心力と引力がつりあっていつまでも落下しないで地球を回り続けます。
時速7.9キロメートルで進むリンゴは1時間ちょっとでひとまわりします。月が地球をひとまわりするのは1か月なのでずいぶん違います。地球からの距離が近いほど速い速度が必要になるのと一周の距離が短いので、ひとまわりする時間は短くなります。上空100キロメートルではなく3万6千キロメートルの高さに持っていったリンゴはひとまわりするのにちょうど1日かかるようになります。地球自体も1日で1回転しているので、赤道の上空3万6千キロメートルのリンゴは地上からだと静止しているように見えます。衛星放送などに使われている放送衛星も赤道の上空3万6千キロメートルにあって電波をだしています。地上から見て静止しているので、アンテナの向きは一度決めてしまえば動かす必要がありません。
地上から見て静止している赤道上空3万6千キロを回っている衛星のことを静止衛星と呼びます。


軌道エレベータというのは地上と静止衛星を結び、さらに先まで延びているエレベータのことで現実には存在しませんがSF小説などには登場するし、丈夫な材料さえあれば現在の技術でも作ることができると考えられています。
作り方としては、静止衛星から上下に長くて丈夫なワイヤーを伸ばして、下に伸ばしたワイヤーを地上に固定します。最初のワイヤーを足がかりに、複数のワイヤーなどを追加していきます。
軌道エレベータができたとして、地上から上っていくと体重が軽くなるのに気が付くはずです。地球から遠くなるにしたがってだんだん引力が弱くなり遠心力が強くなることによって高さ3万6千キロメートルまでいくと体重はゼロになります。そこからさらに上に上ると今度は遠心力の方が強くなり、地球と反対側が下に感じられるようになります。静止衛星の位置よりも地球に近い側では地球側に引く力が働き、静止衛星よりも高い場所では地球から遠ざかる方向に力が働きます。静止衛星の位置の下側と上側では力が逆にかかるわけです。この軌道エレベータを上下に引っ張る力のことを潮汐力と呼びます。潮汐は潮の満ち引きのことで、満潮や干潮も潮汐力の働きによるものです。


軌道エレベータに働く潮汐力は地球が原因ですが、地球での潮の満ち引きを起こしているのは月の引力です。万有引力の法則はリンゴでも月でも同じように扱いますが、地球であっても同じに扱います。リンゴと地球ほどに極端に大きさが違う場合には地球は動かないでリンゴだけが動いていると考えても問題ないのですが、厳密にはリンゴが地球に落ちるだけでなく、地球もリンゴに落ちています。軽い物と重い物でも軽い物だけが動くのではなく、両方動きます。ただ動く量は重さに逆比例するので、100倍重い物が動く量は100分の1になるわけです。
月と地球の場合だと、地球は月の約80倍の質量を持つので地球が動く量は月の80分の1くらいになります。月は地球と月の共通重心を回っているというのが少し厳密な言い方で、地球もその共通重心を回っています。その共通重心というのは地球の中心から月の方向に約4万6千約4千6百キロメートルの位置ですが、これは地球の外ではなくて地面の下にあります。つまり地球と月の共通重心は地球の中にあるわけで、月は地球を回っているというのも間違いとも言い切れません。
共通の重心を回る地球も月も、地球の中心、月の中心でみれば引力と遠心力が釣り合っています。しかし重心に近い側では引力が強くなり内向きの力が働き、重心から遠い側では遠心力が強くなるので外向きの力が働きます。