Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

地球が動いている証拠

http://d.hatena.ne.jp/jura03/20091010/p2の「ああキリスト教 - 今日の雑談」経由で、http://d.hatena.ne.jp/archytas/20091009/1255049202の「信仰すること、探求すること - 鼻毛の長い人生」に書かれていたことの関連。

問題は事実として実証されるかどうか、というところになるのではなく、現実に対して信念をもって果敢にアプローチするところが信仰と探求の同質性ではないでしょうか。同じ自然を神のものとみなして、頭ごなしに惑星軌道を「円」と思っていた古代人よりも、チコのデータではどうしても円軌道にならないことが、神の業であることの否定にはならず、まさに神の業であるとの固い信仰が故に、そこに見いだすべき「真理」があるのだという確信をもって突き進むケプラーこそが「楕円」を発見するわけです。

へたすると「思い込み」なのですが、何らかの現実的な技術など(ケプラーは数学者として図抜けていました)に裏打ちされると俄然力をもつ。もとからものすごくエネルギーがあるのでとにかく何ページも書いてしまうとか、片っ端から実験するというような、そんなパワーで己の思い込みを実現したりするわけです。

http://d.hatena.ne.jp/archytas/20091009/1255049202


チコ・ブラーエ*1は、地球以外の惑星は太陽を周回し、太陽が周囲の惑星ごと地球を周るという天動説と地動説の折衷案のような説を唱えていました。
もし地球が恒星に対して動いているとしたら、地球の位置の変化によって恒星の見え方が変わる視差が存在するはずだが、観測結果に視差はみられなかったので地球は動いていないという考え方で、これは全く科学的です。

ただし彼自身は、地動説が正しければ当然観測されるであろう年周視差が観測できなかった事から、地動説には否定的であり、「太陽は地球の周りを公転し、その太陽の周りを惑星が公転している」という「修正天動説」を提唱した。

ティコ・ブラーエ - Wikipedia


目の前に指などを出して、右目と左目で見ると位置がかわるというのも視差です。年周視差とうのは、地球の公転によって発生する視差のことです。
年周視差が観測されなかったのは、それが当時の観測制度よりもはるかに小さかったからです。パーセクという恒星までの距離を現すのにつかう単位があって、1パーセクは約4.3光年です。このパーセクは、年周視差が1秒の距離と定義されています。1秒というのは角度の単位で、1度の3600分の1です。


年周視差が始めて観測されたのは、1838年のことです。(参考:wikipedia:年周視差
年周視差というのは、地球が恒星に対して位置を変えていることの直接的証拠です。では、それまでは直接的な証拠も無しに地動説を信じていてのでしょうか。


実は、もう一つ年周光行差というものによっても、地球が動いていることを観測することができます。光行差というのは、真上から雨が降っている場合でも歩いていると斜め上から雨が降ってくるように観測されるのと同様なことが雨ではなく光に起こる現象です。地球が移動している場合に、その速度によって光が地球の進行方向から来るように見えるはずです。
この年周光行差は、年周視差よりもだいぶ大きかったのでこちらが先に観測されました。1728年のことです。これは、万有引力を発見したニュートンの死後のことです。*2
ニュートンの時代には、わりと広く地動説が信じられるようになってきていたようですが、その時はまだ地球が動いている直接的な証拠が無かったというのは興味深いことだと思います。
万有引力によれば、太陽が全く動かないで惑星が周回しているというのも厳密には間違いで、太陽もまた太陽系の中心を周回しているとなるのも興味深いところです。


ニュートンよりの以前のケプラーの時代にも、当然ながら地球が動いている直接の証拠はありませんでした。しかし、ケプラーの法則によって太陽と惑星の位置関係がうまく説明できたことも事実です。
ケプラーは、結果として間違った説もとなえています。惑星の軌道の間に仮想的な正多面体が存在するという説などは、かなり力を入れていたようです。5種類ある正多面体が、当時発見されていた5つの惑星と関連しているという説です。惑星の軌道は、外側の正多面体に内接し、内側の正多面体に外接するようになっているという数学的にも興味深い説でした。ただし、こちらはうまくいきませんでした。
数学的に興味深いといえば、ケプラーの球体充填問題もしくはケプラー予想として知られる問題もあります。多数の球を充填する場合に一番効率の良い場合について、ケプラーは面心立方格子だと予想しました。これは結果的に正しいと証明されましたが、これはなんと1998年のことです。



参考リンク:http://www.s-yamaga.jp/nanimono/uchu/tentaitoshitenochikyu.htm「天体(惑星)としての地球」
     http://www.s-yamaga.jp/nanimono/sonota/kepler.htmケプラー

*1:ティコ・ブラーエとも。Tycho Brahe

*2:万有引力の法則についても、天体でなく地上にあるリンゴのようなもの同士にも働くことについては、キャヴェンディッシュの実験を待つことになった。