Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

業務上過失致死

車を運転する人なら、交通事故で死者が出れば業務上過失致死罪に問われる可能性はあります。交通事故の場合は、自分が気をつけることでは可能性を減らすこともできます。逆に、危険な運転をして事故を起こせば業務上過失致死よりも重い危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。
何かをして業務上過失致死罪に問われるならまだわかりやすいですが、しなかったことに対して業務上過失致死罪に問われることがあります。例えば、最近判決がでた割りばし事故では、怪我をした子供を診察した医師が業務上過失致死に問われました。ちなみに判決は、無罪でした。

「延命の可能性低い」医師に無罪…割りばし死亡事故

割りばし死亡事故裁判の無罪判決後、会見する両親の杉野正雄さんと文栄さん 1999年に東京都杉並区の保育園児杉野隼三(しゅんぞう)ちゃん(当時4歳)が綿あめの割りばしをのどに突き刺して死亡した事件で、業務上過失致死罪に問われた元杏林大学付属病院医師・根本英樹被告(37)の判決が28日、東京地裁であった。

 川口政明裁判長は診断ミスがあったことは認めたが、「治療したとしても延命の可能性が低かった」と述べ、無罪(求刑・禁固1年)を言い渡した。

 隼三ちゃんは99年7月10日、割りばしをくわえたまま転倒し、同病院で診察を受けたが、根本被告は傷口に消毒薬を塗るなどしただけで帰宅させた。隼三ちゃんは翌朝、頭蓋(ずがい)内損傷で死亡。その後の解剖で、約7・6センチの割りばし片が小脳に刺さっているのが見つかった。

 判決はまず、耳鼻咽喉(いんこう)科の当直医として、隼三ちゃんを診察した根本被告が割りばしによる頭蓋内損傷を予見できたかについて、意識レベルが低下した容体などから、「頭蓋内に異変があったことを疑うことが可能だった」と述べた。

 さらに母親への問診などを行い頭蓋内損傷の疑いが強まれば、コンピューター断層撮影をするなどして、最終的には割りばしが残っていることに気付くことができたと指摘。根本被告には、これらの診察や検査を行わなかった過失があると認定した。

 しかし、その後の治療で、死亡を回避できたかについては、「脳神経外科医に引き継いだとしても、技術的に治療が困難で、救命はもとより延命可能性も極めて低かった」と判断。過失と死亡の因果関係を否定した。

 一方、判決は、根本被告が隼三ちゃんの死後、診断ミスに気づき、カルテに適切な診断をしていたかのように取り繕う記述を加えたと認定。「患者の病態を慎重に観察する初歩的な作業を怠った」と指摘した。

(2006年3月28日22時6分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060328it11.htmより引用)
(2006年12月14日現在上記のアドレスにはありません。http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060329ik05.htmにあるものが同じ内容のようです。)


花火大会での事故で、警備責任者が業務上過失致死傷容疑で書類送検されたこともあります。これも何かをしなかった事に大して罪を問うものです。この事件は不起訴処分になっていますが、神戸検察審査会は「起訴相当」の議決をしています。

歩道橋事故、元明石署長ら起訴を最高検に申し入れへ

 兵庫県明石市で2001年、花火大会の見物中に犠牲となった歩道橋事故の遺族らが29日、業務上過失致死傷容疑で書類送検され、嫌疑不十分で不起訴となった元明石署長と元副署長(ともに退職)を起訴するよう最高検に申し入れる。

 遺族は、神戸検察審査会に2度にわたって申し立てをし、同審査会は04年4月と昨年12月に「起訴相当」を議決。神戸地検が3度目の捜査を行っているが、7月21日に公訴時効が成立することから、元署長らを起訴するよう、要請書を最高検に提出することにした。

(2006年3月29日11時55分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060329ic02.htmより引用)


それから、六本木ヒルズでおきた回転扉での事故でも業務上過失致死罪が問われました。この事件では有罪判決が確定しています。

六本木ヒルズ回転扉事故 判決公判を受けて

本日、東京地方裁判所において、平成16年3月に六本木ヒルズ森タワーの回転扉で起きた事故につきまして、業務上過失致死の罪に問われた弊社元役員1名および職員1名の判決公判が開かれ、両名に対し、それぞれ禁固10月(執行猶予3年)の判決が言い渡されました。
http://www.mori.co.jp/apology/050930.htmlより一部引用)


そのほかにも、幼稚園や学校の行事などで死者が出た場合は、業務上過失致死罪に問われることもあるようです。でも家族旅行などで事故が起きた場合に、親が業務上過失致死罪に問われることは無さそうです。

しかし、子供が死亡する事故は家庭内、家庭外を問わず発生しています。外国の例ですが、鉛を含んだアクセサリーを誤飲した子供が鉛中毒で死亡したようです。誤飲では、電池やタバコなども危険です。

鉛含む子供向けアクセサリー回収、厚労省が指示

 子供向け金属製アクセサリーに高濃度の鉛が含まれていた問題で、米国の靴メーカー「リーボック・インターナショナル」が配布したブレスレットの一部を米国の少女が誤飲し、鉛中毒で死亡していたことが分かり、厚生労働省は27日、同社の日本法人「リーボックジャパン」(東京・渋谷)にアクセサリーの回収を指示した。

 ブレスレットは鉛でできた中国製。リーボックのロゴが刻印されているハート形の飾りが付いている。米国内では2004年5月から今月まで販売された子供靴におまけとして付いていた。同省によると、日本国内でも同種の靴が販売されていたことから、同社に対応を求めた。

(2006年3月27日23時15分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060327i116.htmより引用)

(2008年2月12日追記)
割りばしによる死亡事故に関する、民事の地裁判決が出ましたので追加しておきます。

「割りばし事故死」訴訟、両親の賠償請求を棄却…東京地裁
 1999年に東京都杉並区の保育園児杉野隼三ちゃん(当時4歳)が綿あめの割りばしをのどに突き刺して死亡した事故で、杏林大医学部付属病院(三鷹市)が適切な診療を怠ったのが死亡の原因として、両親が、同病院を運営する学校法人と治療した当時の当直医、根本英樹医師(39)に約8960万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、東京地裁であった。

 加藤謙一裁判長は「医師や病院に過失はなく、診療行為と死亡との間に因果関係もない」と述べ、両親の請求を棄却した。両親は控訴する方針。

 事故を巡っては、根本医師が業務上過失致死罪に問われ、東京地裁は2006年3月、「診断ミスはあったが、死亡との因果関係はなかった」として無罪判決(検察側控訴)を言い渡したが、この日の判決は診断ミス自体を認めなかった。

 判決によると、隼三ちゃんは99年7月、自宅近くの盆踊り大会に母親と参加した際、綿あめの割りばしをくわえたまま転倒。同病院に運ばれたが、根本医師は薬をのどに塗るなどして帰宅させた。隼三ちゃんは翌朝、死亡。その後の解剖で頭蓋(ずがい)内に約7・6センチの割りばし片が刺さっているのがわかった。

 両親側は「割りばしによる頭蓋内損傷を考えて画像診断や問診を行うべきだった」と主張したが、判決は「割りばしが頭蓋内に突き刺さった例は過去に報告されておらず、当時の医療水準では頭蓋内損傷の可能性があると診断することはできなかった」と指摘。さらに、「仮に診断できていても救命の可能性が高かったとはいえない」と述べた。

 東原英二・同病院長の話「主張が認められほっとしています。杉野隼三さんに対しては改めて心からご冥福(めいふく)をお祈りします」

(2008年2月12日20時42分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080212-OYT1T00252.htm


(2008年2月14日追記)

割りばし事故訴訟、両親が控訴
 1999年に東京都杉並区の保育園児(当時4歳)が綿あめの割りばしをのどに突き刺して死亡した事故を巡って、両親が杏林大医学部付属病院を運営する学校法人や医師に損害賠償を求めた訴訟で、両親は13日、請求を棄却した1審・東京地裁判決を不服として控訴した。

(2008年2月14日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080214-OYT8T00236.htm