Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

支援の有無

同じ日に似たようなエントリーをいくつも見かけたので、雑文祭みたいだなと書かれた内容からすれば不謹慎な感想を持ちました。ウィキペディアの項目によれば「福島県立大野病院産科医逮捕事件」という事件に関する話題です。


http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20080218#p1 我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援し - NATROMの日記
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20080218#p2 「2.18」-空中ブランコ - 琥珀色の戯言
http://blackshadow.seesaa.net/article/84681850.html 幻影随想 我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20080218 2.18 - 新小児科医のつぶやき

参考
福島県立大野病院産科医逮捕事件 - Wikipedia


医療事故と交通事故を関連させて考えるのはどうも癖になっているみたいですが、今回も交通事故で似たような話を連想しました。類似点は、死亡事故であること。そして、関係者が逮捕されて裁判が行われているが、それが不当だと主張する人が多くいるという点です。
具体的にはhttp://k1fighter2.hp.infoseek.co.jp/Enzai/Kochi/EnzaiKochi.htmの「++ 冤罪 高知県警・警察による証拠捏造事件 白バイがスクールバスに激突 ++」などで紹介されている事件です。


もう一つ連想したのが、新潟の高校生が学校のトイレで出産して、生まれた子供に対する殺人容疑で逮捕された事件。この事件に関しては、逮捕された高校生を非難する言葉は見つかっても擁護するものは見つかりませんでした。しかし、おなかが痛くなってトイレに行くというのは何の不思議もないことです。あと周囲が妊娠に気が付かなかったというのは記事に書かれていたのですが、本人はどうだったのだろうというのを知りたいと思いました。前に「妊娠に気づかない」書いたように、本人も妊娠に気が付かないという例もあるからです。何より、学校で授業を受けていたのだから出産を予測していたはずはないのではと思います。そして腹痛からトイレに行き、そこで出産。そしてトイレの水で赤ちゃんが水死したことをもって未必の故意による殺人として逮捕されたようです。
しかし、出産というのは体力も使うし痛みもあり精神的にもかなり消耗するものです。妊婦教室などに行き、心積もりと準備をしっかりして、医師や助産師の手助けを受けてもなお大変なことです。だから、予期せぬ出産で介助者もなくひとりきりで出産した高校生が、適切な処置が出来なかったことを理由として逮捕されるのはどんなもんだろうとも思います。
あと、たまたま安産だったのが逆に不運なのかなとも。もし難産で生まれる前に病院に行けば、問題なかったかもしれないからです。ものすごい難産で妊婦や赤ちゃんが死んだりするほどでは困りますが。

http://www.crnjapan.com/articles/2007/ja/20070606-birth_at_school.html 出産:女子生徒が校内で、男児死亡 新潟の高校



話を最初の「福島県立大野病院産科医逮捕事件」に戻します。この事件による医師や病院に対する影響というのはいろいろなところで見ることができますが、患者からみた影響というのはあまりなく、病院が減って困るというのくらいでしょうか。それ以外で思ったのは、患者の大病院志向を加速する影響があるのではというものです。

ですから、今回の事例では、誰が執刀していても、母体死亡となっていた可能性が非常に高かったと思われます。帝王切開をしてみたら、たまたま癒着胎盤であったケースで、母体を救命できる可能性があるのは、いつでも大量の輸血が可能で、複数の産婦人科専門医が常勤し、麻酔科医も常駐している病院だけだと思います。そういう人員・設備が整った病院であっても、帝王切開中に突然大量の出血が始まれば、全例で母体を救命できるという保障は全くありません。

http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2006/02/post_1b76.html

これを読むと万一のことを考えれば、“いつでも大量の輸血が可能で、複数の産婦人科専門医が常勤し、麻酔科医も常駐している病院”に行った方が良いということになるからです。そこまでいかなくても産院よりも病院での出産を望む人が多いのもレベルは違うけれども同じ傾向で、自然分娩で何かあった場合に緊急帝王切開が可能だからという面がありそうです。たとえ助産院のすぐ近くに提携している産婦人科の病院があったとしても移送には時間がかかります。
お産に限らず、全ての怪我や病気で万一のことを考えればなるべく大きな病院に行くことに患者にとって合理的な理由があるわけです。もしアメリカに行かなければ直らない病気ならアメリカに行くなんてことだってあるでしょう。

助産院も、開業している先生がたもそうだけれど、あの人達は、「後方に受け入れ可能な病院がある」という事実をインフラとして利用していて、そこから自らの施設に安心感を付与している。

ベッドを持たないクリニックにだって、もちろん一定の確率で、入院が必要な、具合の悪い患者さんが発生する。ベッドを持たない先生がたも、助産師の人達も、だから本来、「緊急対応能力」を自前で備える必要があって、それを「持たない」と公言したクリニックには、お客さんなんて集まらない。

http://medt00lz.s59.xrea.com/blog/archives/2008/02/post_603.html

つまり、大病院に患者が集まるということです。