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シュレーディンガーの生命

量子力学の黎明期に非常に多くの貢献をしたシュレーディンガーの書いた、生命に関する本を読みました。
その「生命とは何か」は今年の5月に岩波文庫から出ました。岩波新書版は在庫切れが続いていたのが文庫になったのはベストセラーの「生物と無生物のあいだ」という本で取り上げられて多くの人の関心を引いたことが大きいのではないかと思います。文庫版のあとがきでは「生物と無生物のあいだ」についてもふれられています。


染色体は見つかっていたけれどもDNAはまだ発見されていなかった時代に、物理学の立場から生命の謎にとりくんだ本書は画期的だったのではないかと思います。しかしその道のりは現在でもまだとっかかりの部分なのかもしれません。部分としては例えば筋肉の動く仕組みを分子式で表すことなどが出来るにしても、全体としてのシステムについてはまだまだのような気がします。

シュレーディンガーは、ベンローズなどとはちがって生命の仕組みに量子力学的な考えは必要ないとしています。*1つまり古典的な決定論で説明できるという考え方にたっていたようです。そしてそこから発生する問題、決定論と自由意志についてはこんな風に書いています。

右の二つのことがらから推して考えられる唯一の結論は、私――最も広い意味での私、すなわち今までに「私」であると言いまたは「私」であると感じたあらゆる意識的な心――は、とにかく「原子の運動」を自然法則に従って制御する人間である。ということだと思います。

(「生命とは何か」173ページより引用)


これは物理法則による決定論も成り立つし、自分をコントロールする自由意志も成り立つということだと思います。決定論と自由意志の両立ということからはテッド・チャンの「あなたの人生の物語」を連想しました。
また、光が波でもあるし粒子でもあるという量子力学のことも頭に浮かびました。



生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

*1:例外もあるとはしていますが。