Log of ROYGB

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宇宙が消滅しても記録は残る

http://d.hatena.ne.jp/michiaki/20090121#1232545657の「100億年すれば、宇宙は消滅する。だから、SONYのハンディカムで娘の成長過程を記録することに意味はない。」を読んで思い出したこと。

娘を撮ることに、目的だとか、意味だとか、そんなものはないと思う。

何をしたところで、100億年してしまえば、宇宙自体が消滅してしまう。

その時には、娘がいたことを、覚えている人もいない(いなくなってしまう)し、娘が残したすべてのムービーも、ハンディカムも、BRAVIAも、すべて、跡形もなく消えてしまう。

http://d.hatena.ne.jp/michiaki/20090121#1232545657


思い出したのは小松左京の「ゴルディアスの結び目」に収録されている「あなろぐ・らう゛」という短編。前半に登場するのは一組の男女と、「気配」だけの存在。いつともどこともわからない場所で男は「気配」にこう問いかけます。

これは……「海」です。あれは……「雲」、あちらには、長い裾をひく「山」があります。青い「空」を、強い「風」が吹き、「太陽」の光がふりそそいでいます。これらはすべて……「地殻」のいちぶにすぎません。「塩分」という物質を含んだ、大量の「水」という物質、細かい水滴の集合、珪酸とアルミナの混合物、酸素と窒素が二対八でまじっている混合ガス、一億五千万キロの宇宙空間を、核融合反応を起こしている大質量の集合から輻射され、わたってくる電磁波、つまり光子流……こういったもおが、なぜ、私達には“美しく”快く“爽やかに”感じられるのですか?――それは生物の中で、私たちだけでもないようです……


角川文庫「ゴルディアスの結び目」収録「あなろぐ・らう゛」277ページより引用。


後半は舞台が変わり、これまたいつともどこともわかりませんが、おそらくはずっと未来のこんな会話。

結局これは……一体何でしょう?
やはり、一種の「記録」――乃至はメッセージと見るほかないいだろう。
でも……それにしても、測定された“古さ”は異様じゃありませんか。測定班の結論は信頼してもいいもおでしょうか?
信頼するよりしかたがないだろう。
しかし、それでは……この「空間の歪み」は、この宇宙が創造される以前から存在しつづけたということになるじゃありませんか。この宇宙の歴史よりもふるい……。そんな事が考えられますか?


角川文庫「ゴルディアスの結び目」収録「あなろぐ・らう゛」294〜5ページより引用。


ここに出てくる「記録」は、前の宇宙から何らかの方法で次の宇宙に向けて送られたものです。自分達の「達成」の記録として、そして他の宇宙に対するはげましのメッセージとして。記録されているのは人間とその周りの自然ですが、記録に残したのは別の存在です。

でも、人間自身の手で、自分達の存在した記録をこの宇宙が終わるまで、そして終わった先までも残すことができるようになるかもしれません。



ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫)

ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫)