Log of ROYGB

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インフルエンザ診断ゲームと前提条件

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20101109#p1の「インフルエンザ診断ゲームで学ぶ検査閾値と治療閾値 - NATROMの日記」に関して。


インフルエンザ診断ゲームの前提条件を変えれば最適な戦略が変わるというのは書いてあるとおりですが、こんな条件だったらどうでしょう。

  処方あり 処方なし
インフル +10点 −10点
非インフル 0点 0点

これは、アメリカの例として出てきたものの逆パターンです。薬剤にかかるコストや不必要な投薬による副作用のリスクを無視できるとした場合というわけ。
この前提条件だと、インフルエンザでもタミフルを投与しないアメリカのパターンと同様に、検査するだけ無駄となります。
違いとしては、アメリカの場合の最適戦略が全例非処方なのに対して、上記のパターンでは全例処方が最適戦略となります。



「利得は患者によって異なる」の部分のグラフを見ても、検査前確率が約0.4以上ならば全例処方が最適戦略となることが推察できます。

検査前確率が高ければ検査せずに投与するのが正解であるが、検査前確率がそれほど高くなかったら?利得が変われば、検査閾値も治療閾値も変わる。たとえば、インフルエンザに対して処方しなかった場合のペナルティを-50点としたら、検査閾値や治療閾値は下がる。

http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20101109#p1

だから全ての場合で簡易検査が不要であるとはいえないとしても、検査が不要な場合も存在するのは確かなのでしょう。
そう考えると

だから、子供にはタミフルリレンザを投与した方がいい。まして、ぜんそくなどの呼吸器疾患を持つ子供なら、なおさらだ。

http://openblog.meblog.biz/article/1783308.html

「簡易検査は不要だ。簡易検査なしで抗インフルエンザ剤を服用せよ」
 と述べたが、これが当てはまるのは、乳幼児・妊婦・高齢者・基礎疾患患者などの虚弱者だけだ。
 一方、もともと健康な大人であれば、抗インフルエンザ薬を服用する必要はない。むしろ、服用しない方が好ましい。(本人にとってではなく、社会的に。ウイルスに薬剤耐性が付くと困るから。)

http://openblog.meblog.biz/article/3532515.html

というのも、重症化する可能性が高い場合には検査が不要で全例処方が最適解なのだという主張だとすれば特に矛盾は無いような気がします。


(11月10日追記)
コメント欄を読みましたが、少なくとも「重症化する可能性が高い場合には検査が不要で全例処方が最適解」というのや「検査前確率が治療閾値より高ければ、検査なしで処方したほうがいい」ということについてはNATROMさんもOpen ブログの管理人さんも、それほど違わないというかだいだい同じ考えなんじゃないかという感想を持ちました。
まあ違う部分もあり、お互いにそこに重点を置いているのかもしれませんが。


インフルエンザ診断ゲームの前提条件で検査のコストが2点よりも大きかった場合には検査をした方が良い場合が減少するというのも、検査の必要性に対する考え方の違いに影響があるかなあということも考えました。検査コストが10点の場合を考えると、検査したほうが良い場合はほとんどのパターンで無くなってしまいます。
他には治療を行う医師の立場でなく、治療を受ける患者の立場での利得を最大にする場合だと前提条件の点数の配分が変わってきたりするかもしれません。