ひとりっ子とそれ以外
グレッグ・イーガンの短編集「ひとりっ子」に関して。収録作品は「行動原理」「真心」「ルミナス」「決断者」「ふたりの距離」「オラクル」「ひとりっ子」の7つ。
イーガンにしては珍しく夫婦を扱っているものが多いと感じました。「真心」や「ふたりの距離」では夫婦生活を継続させる為にガジェットが使われます。「ひとりっ子」も夫婦と子供の話だし、「行動原理」での行動も夫婦の愛情が元になっているともいえます。
哲学でいう「自由意志問題」も多くの話で扱われます。「ひとりっ子」に出てくる「ゾンビ」という言葉は「哲学的ゾンビ」のことでしょう。
「ルミナス」は数学を扱っている点ではテッド・チャンの「ゼロで割る」を思わせます。理論と事実が断絶しているのか不可分なのかという点ではまったく逆ですが。でも数学の体系が無矛盾ではないことは現実にも証明されているし、それは「ゼロで割る」や「オラクル」でも書かれています。そういう意味では矛盾があってもかまわないような気もします。
ルミナスというのはコンピュータの名前ですが、その描写は古いSFに出てくるようなスーパーコンピュータを思わせます。よくわからないがなんかものすごいと感じさせられたからです。
「ひとりっ子」にも新しいコンピュータが登場します。でも、ある意味では今ある古典的コンピュータと同じではないかとも思います。決定論で動作するからです。あと、新しいコンピュータの原理云々という部分を除外すれば比較的よくある話と言えるのかもしれません。読んでいて連想したのは、「フェザータッチ・オペレーション」というマンガです。
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