π進数
最近読んだ「ストリンガーの沈黙」という本にπ進数が出てきました。未知の知性体と思われるストリンガーの使っているのがπ進数ではないかと推測する場面です。
π進数については何度か書いたことがありますが、もう少し納得のいくπ進数を使う理由がないか考えてみます。前に考えたのは、車輪生物がπ進数を使うというものです。
SF的な発想をすれば、車輪生物がπ進数を使うということも考えられます。車輪生物が、自分の身長つまり直径に対して、1回転した長さ、直径×円周率を使って数というものを理解するわけです。
http://d.hatena.ne.jp/ROYGB/20060413
これだと1回転でπ、2回転で2π、3回転で3πと、πはでてきますがπ進数とまではいかなそうです。
自然数ではない数を使った進数については「e進数ふたたび」でも書きました。自然数を教わるときに使うタイルのようなものを応用して自然数以外の表記について考えました。面積は変えずに縦横の長さを変えて、縦の長さをx、横の長さをyのタイルがx^yを表すというものです。
これで好きな数を使った進数が実現できますが、これだけではπ進数にする必然性がありません。何かπ進数にすると便利なことがあれば、説明になるのですが。例えばe進数を使うのならば効率が良いという理由があります。
コンピュータなどで二進数が使われる説明として、効率の良い進数であるからというのがありますが、それならば3の方がeに近いので効率は高くなるはずです。もう一つの理由として、電気回路が二進数を使うのに都合が良いというのもあります。スイッチのオンとオフを二進数の1と0に当てはめることができるからです。三進数を使うには3つの状態が必要になりますが、スイッチを2つ使うのであれば無駄が出てしまいます。
ただし、電気信号の大きさなどを使って2よりも多くの状態を表すことも可能です。より多くの容量を実現するのに2つの状態よりも多い値を記録できる多値メモリも使われているし、デジタル通信などでは8つの状態を2系統使って64状態を表したりというようなことも行われています。これにより1本の線や無線の場合でも限られた周波数を使ってより多くの信号を伝えることができます。だから現在では、電気回路であっても二進数だけが使われているとも言い切れない部分もあります。
話をπ進数にもどすと、電気回路と二進数のようにπ進数を使うのに都合の良い何かがあれば、π進数を使う必然性も出てきます。
長方形のタイルではなく、円筒形の何かを使った場合には円周率が登場します。円筒の側面の面積は、円周×長さで、円周の長さが直径×円周率だからです。だから、長方形のタイルではなく円筒形のリングのような物を使った場合には円周率であるπを使った進数も存在する必然性が出てきます。
ところでπ進数のような自然数で無い数を使った表記法の場合に、自然数を表すのが面倒になるという問題があります。これは自然数を自然な物として認識している人間にとっては不便です。逆に、π進数などを使っている知性体は自然数を人間のように自然とは感じないかもしれません。「ストリンガーの沈黙」にもそんなような描写がありました。
自然数というのは、何かの個数を数えるには便利ですが、長さや重さなどの量を表すには必ずしも適してはいません。長さや重さといった切れ目の無いアナログな量を、自然数といった飛び飛びの値に置き換える場合にはどうしても誤差がでます。これは自然数を拡張して小数などを使っても本質的な面では変わりません。勿論のこと、長さをヒモなどに移し換えて記録した場合にも誤差は出るのですが。
デジタルという考え方は、コンピュータなどと関連して語られることが多いですが、自然数というのもデジタル的な離散数と考えることができます。
そうではないアナログ的な数の表記というのもあってもいいとは思うのですが、具体的にどんなものかというのを考えるのは難しそうです。
ストリンガーの沈黙 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
- 作者: 林譲治
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/11/01
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