Log of ROYGB

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宇宙戦艦ヤマトは架空戦記か?

宇宙戦艦ヤマトは、ある種の架空戦記としての面もあるような気がします。*1一度は負けて沈んだ戦艦大和が、未来で蘇って地球を救う活躍をするわけですから。
TVシリーズの最初にも、太平洋戦争時の大和が出発する場面があります。


ヤマトが大和そのものなのか見た目を似せた新造なのかについてアニメでは具体的な描写は無かったを思いますが、石津嵐著の小説版ヤマトでは、海底に沈んでいた大和を改造して宇宙船にしたという説明があります。通常宇宙船をつくるにはドックなど大型の装置が必要なのに対し、ある程度の土台がある場合には小型の自動機械を使うことで安価につくれる、というそれなりに整合性のある説明。海底の大和を発見したのは科学者であった沖田艦長で、自分の研究に使う宇宙船として使う予定でした。


地球を襲う遊星爆弾が放射能を帯びているのは、原爆を連想させます。岩石などを宇宙から落下させることによる攻撃方法は、ハインライン著「月は無慈悲な夜の女王」などSF作品に登場しますが、単なる石でも膨大な運動エネルギーによって爆弾のような効果が出るという原理と放射能は無関係です。あえて放射能を帯びさせたのは、原爆からのイメージだと考えるとすっきりします。


ガミラスと地球の圧倒的な科学力の差、物量の差というのは当時のアメリカと日本の状況と似ているわけです。現実にはたった一隻の戦艦が戦況をひっくり返すといったことは起きなかったのですが、宇宙戦艦ヤマトではたった一隻で絶望的な状況から奇跡を起こしたわけです。まあ一隻とはいっても、ブラックタイガーという艦載機が多数ヤマトには搭載されてましたが。この点では、味方航空機の護衛も無く沈んだ大和とは違います。


最近公開された実写のヤマトは見ていないのですが、ガミラスの扱いがアニメとは大きく違うようです。感想などを読む限りでは小説版に近い印象があります。小説版にはイスカンダル星は登場しますが、ガミラス星は登場しません。そして、スターシャはイスカンダル人の作ったコンピュータだったのです。科学力が進んだイスカンダルが作ったコンピュータは、実体をもった映像を作成する能力を持っていて、スターシャはコンピュータの作った実体映像。地球に波動エンジンなどのデータをもたらした宇宙船に乗っていたサーシャも同じくコンピュータの作り出した実体映像で、いわばスターシャのコピーです。
デスラーはじめガミラスも、コンピュータの作り出した実体映像です。コンピュータは自らを守る為にガミラスを作り出したのですが、それを危険視したイスカンダル人をガミラスは滅ぼしてしまい、さらには他の星を侵略しだします。コンピュータが創造者にはむかうというのはSFとしては定番ですが、防衛の為につくられたガミラスが他を侵略するというのは皮肉です。
皮肉といえば、イスカンダル星でスターシャと会った古代達はそういった真相を知らされ、ガミラスを滅ぼす方法も知ることになります。それは、おおもとのコンピュータを破壊するというもので、ガミラスだけでなくスターシャもこれにより消滅します。ガミラス同様にある程度コンピュータから独立した意識を持ち行動できるスターシャは、コンピュータの制限によってはっきりと言うことはできないものの、間接的なヒントの形で自らをも滅ぼすことになる方法を伝えました。
さらなる皮肉というかアニメのハッピーエンドからは遠い小説版では、放射能を除去する便利なコスモクリーナーという装置は登場しません。その代わりにスターシャから与えられたのは、人類を放射能にも適応できるように改造する方法でした。


アニメではイスカンダル星ガミラス星は連星でした。イスカンダル星は美しい星ですがスターシャが最後の生き残り、ガミラス星には多数の住民が住んでいますが、地底の空洞内の硫酸の海の上に作られた天井都市での生活で、地球の地底都市とたいしてかわらないんじゃないかとも思えます。
ガミラス星の住人のほとんどは、ヤマトの攻撃によって死んでしまいます。一般市民まで殺すのはひどいとも思いますが、都市のビルをミサイルとしてヤマトを追い詰める攻撃もしています。(追記)ガミラス市民にとっては本土決戦だったのかも。(追記ここまで)
ガミラスの一般市民の死は、間違った指導者を選んだ悲劇としても描かれているようですが、これはある意味で戦前の日本を連想させます。日本を救えなかった大和が未来に蘇り、今度は地球を救うという宇宙戦艦ヤマトですが、倒した相手が昔の日本を思わせる軍事国家だとしたらこれまた皮肉なことです。

*1:同様のことはすでに誰か言っているというか、読んだような記憶もあるのですが。