Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

良い面と悪い面

プロジェクト・ヘイル・メアリーの感想の続きというか、物語の構造とかについて考えたこと。
アストロファージというのが本作のメインガジェットとでもいうべき架空のSF設定ですが、悪い面と良い面の両方で物語を動かしてもいます。
つまり地球に氷河期をもたらすという悪い面と、宇宙船を実現する良い面です。
この同じものが良い面悪い面を持つというのは、何度も出てきます。アストロファージを何とかできる解決策を発見するのですが、良い面だけでなくそれが宇宙船に危機をもたらしたりもします。このチャンスがピンチになるパターンは何度も出てきます。
それが物語としての面白さにもつながっているのですが、設定的にも納得がいきます。偶然によるピンチではなく、起きるべきして起きた問題で、解決策も論理的に導き出すことができるわけです。窒素のボンベが詰まれていたなんてのは偶然ですが、これも同じ物が悪い事と良い事に使えるパターンを踏襲してます。

設定の一貫性でいえば、光でなく音で周囲を把握する生物がいたとしたらという設定を、単に変わった生物として出すだけでなく、光を意識しないことで起きた文化の盲点みたいなものまで想定して書いているのがSFを読んでいると感じさせます。
目では見えない壁の向こう側もわかるというような、特別な出来ることというのは思いつきやすいのですが、人間ではあたりまえなことがそうではないというのを考え付くのは難しいし、それだけに読んでいて驚きがあります。

最終章で時間がだいぶ経っていて、これもパターンとしてはありがちなのですが、世界が救われたのだということを示すという必然性もあるわけです。