機械のアヒルはお腹がすくか?
意識とは何かということを考えるのに、まずもっと簡単なことで考えて見ます。
機械で作られたアヒルというのは、ジャック・ド・ヴォーカンソンが作った「呼吸するアヒル」を想定しています。
1738年後半には、「タンバリンを叩く人形」と「消化するアヒル(Canard digérateur)」を製作した。特にアヒルはヴォーカンソンの最高傑作とされている。アヒルは400点の可動部品で構成され、羽ばたくことができ、水を飲み、穀物をついばんで消化し、排泄することができる[3]。
しかし、このアヒルは実際に食べたものを消化していたのではなく、あらかじめセットされたフンを排泄していただけなのです。この機械のアヒルが、見た目としてはエサを食べていたとしても、本物のアヒルのようにお腹がすいていたとは言えないでしょう。
SF作家アシモフの書いた「鋼鉄都市」に登場するロボットのダニールは、人間のように食事をすることはできますが、これも見た目だけのことです。食べたものが腐らないうちに、身体を開けて食べたものを取り出す必要があります。
別の作品「バイセンテニアルマン」のアンドリューは、最初は金属製だった身体を、徐々に人間に似せていきます。人工臓器などを活用して、エネルギー源も食べた物を体内で燃焼させることで得るようにしました。このアンドリューなら、エネルギー不足を、お腹がすいたと感じることもありそうに思えます。
ペットロボットや掃除ロボが、バッテリーの消耗に合わせて充電台に移動するのは、お腹がすいての行動に見えなくもありません。ただ、実際にお腹がすいたと感じているかというと、少し疑問です。たとえばスマホにもバッテリー消耗の警告はあるし、自動車の燃料切れランプもエネルギー不足のアラームです。これらを擬人化してお腹がすいていると表現することはできても、実際にお腹がすいていると言うことはできないでしょう。
人間のようにお腹がすいたと感じるには、やはり意識が必要だとすると、では意識とは何だとなってしまいます。また、空腹時に軽く運動すると空腹がまぎれるのですが、これはアドレナリンの作用で空腹をごまかしてるわけです。そうすると人間の空腹感も、実際の空腹とは必ずしも連動していないのかも。
人間の意識をシミュレートできたとして、シミュレーション上の人間の空腹感は、本当ではない架空のものなんでしょうか。そうするとシミュレートした意識が感じる他のものも架空なのか、それとも意識そのものがシミュレーション上では存在しないのか。