Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

解けない方程式

「銀河を呼ぶ声」を手に入れて再読しました。きっかけは「沈黙のフライバイ」を読んで「銀河を呼ぶ声」を連想したからです。書かれたのは1967年とかなり昔です。そのため文章の古さを感じるのはやはり最近読んだ「バビロニア・ウェーブ」以上ですが、内容は現在でも充分通用するように思えます。宇宙人からのメッセージというシンプルなテーマを、多額の費用と長い年月を要するプロジェクトについての描写が支えています。

それ以外の収録作では「時間と空間の涯」はよくあるブラックホールが出てくる話のようですが、ブラックホールという言葉が出てくる前にかかれています。「解けない方程式」は、題名からして「冷たい方程式」をもとにした方程式ものですが、あとがきによれば方程式ものとして始めて書かれた作品のようです。一部を引用してみます。

 そんなことはない、式の項数が多いほど、それが複雑な形をしていればいるほど、その会はひとつには定まらないのだ。機械的に解けるものではないのだ。境界条件や初期条件の入れかたによっては、どんな解がとびだしてくるのかわからないおで。二〇人だけが助かる解、三人だけが助かる解、全員が犠牲になる解、そして――全員が命をとりとめるかもしれない解……。


また、この話は回想形式で書かれています。回想部分だけならばハッピーエンドとはいかなくても、ぎりぎりの状況でみんなの助かる解を求めようとして非常に困難な解法を実行としてある程度納得がいく結末です。それを回想している時代で書かれているのは、ありていにいえば世代間の断絶なんでしょうが、回想部分との対比が際立っています。





以前に書いた「沈黙のフライバイ」と「バビロニア・ウェーブ」を読んだ時のものへのリンク
銀河を呼ぶ声