Log of ROYGB

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ハッピーエンド

はてなブックマークの最近の人気記事からhttp://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20071225i302.htmの『「フランダースの犬」日本人だけ共感…ベルギーで検証映画 ニュース エンタメ YOMIURI ONLINE(読売新聞)』の話。

 物語では、画家を夢見る少年ネロが、放火のぬれぎぬを着せられて、村を追われ、吹雪の中をさまよった揚げ句、一度見たかったこの絵を目にする。そして誰を恨むこともなく、忠犬とともに天に召される。原作は英国人作家ウィーダが1870年代に書いたが、欧州では、物語は「負け犬の死」(ボルカールトさん)としか映らず、評価されることはなかった。米国では過去に5回映画化されているが、いずれもハッピーエンドに書き換えられた。悲しい結末の原作が、なぜ日本でのみ共感を集めたのかは、長く謎とされてきた。ボルカールトさんらは、3年をかけて謎の解明を試みた。資料発掘や、世界6か国での計100人を超えるインタビューで、浮かび上がったのは、日本人の心に潜む「滅びの美学」だった。

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20071225i302.htm


日本で人気があるのはアニメ化されたということも大きいのではと思います。原作は比較的短い話です。ブックマークコメントで青空文庫にあるものが紹介されていたので読んでみました。
欧州では人気が無いようですが、それが“負け犬の死”だからという解釈には疑問があります。そんなこといったら新約聖書のキリストだって…。
フランダースの犬」に登場するルーベンスの2枚の絵は「キリストの昇天」と「十字架上のキリスト」でもあるし、新約聖書との類似を見て取ることは容易です。村人たちがネロ*1によそよそしくするのと「ペテロの否認」を重ねることもできるのかなとか。
幸福の王子」という話も、「フランダースの犬」と似ているなと連想しました。人と動物の結びつきと悲しいラストという点では共通しています。「幸福の王子」の王子は像ですが人間だったときの記憶などがあるので、人といってもいいでしょう。明示的に神が登場して救いをもたらしている点では「幸福の王子」は「フランダースの犬」と異なっています。「フランダースの犬」が過去に映画化された時にハッピーエンドに変えられたというのも、もしかしたらキリスト教的な救いというのが関連しているのかもしれません。キリストは死んでも復活するし、旧約聖書ヨブ記でもいちおうはハッピーエンドになっています。
しかし、過去に5回も映画化されているのだから評価されていないなどということもないのではと思いました。


参考リンク
http://www.aozora.gr.jp/cards/001044/card4880.html 図書カード:フランダースの犬
http://www.aozora.gr.jp/cards/000332/card2232.html 図書カード:幸福の王子

*1:青空文庫版ではネルロ。