Log of ROYGB

はてなダイアリーが廃止されるので、引っ越しました。

虚数の抵抗

概要

虚数の抵抗は、電力を消費しないという特徴があります。
身近にある虚数の抵抗として、蛍光灯の安定器やLED豆ランプの中のコンデンサなどがあります。

はじめに

人力検索はてなの質問で、http://q.hatena.ne.jp/1259206584の「複素数の存在意義。 私は文系の人間なのですが、電気の勉強をすることになり数学の基礎からやりなおしているところです。 ところで、電気工学の中に複素数がでてくるのです.. - 人力検索はてな」と、http://q.hatena.ne.jp/1259510201の「身近で複素数で表すと便利なものはありますか? 例えば地図を東経136°北緯60°を136+60iで表すとか。 負数の例は温度計や借金など色々ありますよね。 複素数使って表し.. - 人力検索はてな」が、今回のエントリーのきっかけです。

2番目の質問で、身近な複素数の例として電気回路があげられています。最初の質問では、電気回路の複素数の意義について問われています。ちなみに2つの質問者は同じ人です。(6日修正:別の人でした。)


交流回路などに複素数を使うと、計算が便利になります。複素数を使うと、sinなどの三角関数が楽にあつかえるというのが、計算が便利になる理由としてあります。複素数を使う場合でも、eの冪乗を使う極座標と直交座標の2種類あります。
この辺のことは、電気課の大学や高校で教わる話です。しかし、このエントリーではそういったことには踏み込まず、直感的な面から実数と虚数の抵抗の違いについて書くことにします。

実数の抵抗

実数の抵抗を持つものとしては、電球のフィラメントや電気ストーブのニクロム線などがあります。厳密には電線などにも小さいながら抵抗はあります。
抵抗に電流を流すと、その量に応じた電力が消費されます。消費された電力は、熱や光に変わります。電球は光、ストーブは熱を利用しています。

虚数の抵抗その1、コイル

虚数の抵抗を持つものは、コイルやコンデンサです。蛍光灯に付属している安定器と呼ばれるものは、コイルの一種です。最近はインバータという電子回路を使った蛍光灯も増えていますが、少し前まではほとんど安定器を使っていました。
安定器は、蛍光灯に流れる電流を一定に保つ目的があります。普通の抵抗を使っても電流を一定に保つことができるのですが、安定器という虚数の抵抗を持つコイルを使う理由があります。それが、虚数の抵抗は電力を消費しないというものです。もし、ニクロム線のような物を使ったら、流れる電流は熱にかわります。安定器の場合も、銅線の抵抗の分だけ発熱しますが、その量はわずかです。
コイルでなく、コンデンサを使っても効率よく電流を制限することができるのですが、安定器には蛍光灯を最初に点灯させる高い電圧を発生させるという目的もあります。

虚数の抵抗その2、コンデンサ

照明器具についている小さな豆ランプは、電球の一種でフィラメントを使っていますが、LEDを使って消費電流を抑える物もあります。そのLEDに流れる電流を制限するのに、コンデンサが使われています。
コンデンサを使う目的は、安定器の場合と同じく消費電流を抑えるためです。通常の抵抗、これは実数の抵抗をもつのですが、そこに流れる電流は消費されて熱などに変わります。ところが、虚数の抵抗に電流をながしても、電力は消費されません。LED電球は、消費電力を抑えるという目的があるので、コンデンサを使うメリットがあるわけです。
コイルでなくコンデンサを使っている理由は、コンデンサの方が小さくできるからでしょう。あとコイルの場合だと、銅線の抵抗の分だけ損失が出るからかもしれません。

おわりに

実数の抵抗に電流を流すと電力が消費されるけど、虚数の抵抗に電流を流しても電力が消費されないというのは、実数と虚数のイメージと一致するのではないでしょうか。
ではどうしてコイルやコンデンサに電流が流れても消費されないのかということについても簡単に説明します。
まず、コンデンサの原理は、2つの金属板の間に絶縁物を挟んだものです。空気も絶縁物なので、2枚の金属板を離しておいただけでもコンデンサになります。
コンデンサの両端に電圧をかけると、電圧の大きさに応じて電気がたまります。たまった電気は、電圧が下がると放出されます。交流というのは、電圧の大きさや向きが時間によって変化するので、コンデンサをつなぐと電気を貯めたり放出したりします。それを観察すると、電流が流れているように見えます。
そして電気がたまるにしたがって電流が流れにくくなるので、それが抵抗として観察されます。
しかし、実際は電気の流れない絶縁物の両側に電気が入ったり出たりしているだけです。入った電気はそのまま出てくるので、電気は減らないので消費もされないというのが大雑把な説明です。


コイルの場合は、流れた電流に応じた磁気が発生します。これによって最初に電圧をかけたときには電流が流れにくく、電圧が下がっても電流を流し続ける力が発生します。このため加えた電圧の変化よりも遅れて電流が変化するのですが、結局のところ流れ込んだ電流はそのまま出てきます。
コンデンサの場合は電圧の変化が早いほど電流は流れやすくなるので抵抗は小さくなるのですが、コイルは逆に電圧の変化が早いと電流が流れにくくなって抵抗が大きくなります。同じ虚数の抵抗でも、コンデンサとコイルでは異なります。通常はコンデンサを負の虚数で、コイルを正の虚数で表します。
コンデンサとコイルの両方を使うことで、電圧の変化の速度がある値の場合に、コンデンサとコイルを合わせた抵抗の値を理論的には0にしたり、逆に無限大にすることができます。これが、ラジオやTVで目的の周波数やチャンネルの電波だけを選択できる仕組みの原理です。



オーム LED電球 ナツメ形(白色)OHM AT-03W

オーム LED電球 ナツメ形(白色)OHM AT-03W