Log of ROYGB

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高校無償化と大臣の権限

“26日に発足する安倍新政権は、朝鮮学校に対して高校授業料無償化を適用しない方針を固めた。”*1というニュースがありました。
文部科学相の強い意向ということです。ニュースの時点では大臣ではありませんが、大臣になった場合にそうするということでしょう。
無償化は法律で決まったことであるのに、大臣の意向で支給しないことが出来るのか不思議に思って調べたところ規則の上では大臣が決めることができるようです。

まず法律は“公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律”という長い名前ですが、外国人学校のように法律上の高等学校でない学校については第二条の五で定めています。

五  専修学校及び各種学校(これらのうち高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものに限り、学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 に規定する学校以外の教育施設で学校教育に類する教育を行うもののうち当該教育を行うにつき同法 以外の法律に特別の規定があるものであって、高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの(第五条及び第七条第一項において「特定教育施設」という。)を含む。)

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H22/H22HO018.html


この条文によれば、文部省令で定めるものであれば第二条の「高等学校等」になるわけです。そして高等学校等になることで高等学校等就学支援金の支給を受けることができるわけですが、それを決める文部省令にはこうあります。

一 専修学校の高等課程
二 各種学校であって、我が国に居住する外国人を専ら対象とするもののうち、次に掲げるもの
イ 高等学校に対応する外国の学校の課程と同等の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度に
おいて位置付けられたものであって、文部科学大臣が指定したもの
ロ イに掲げるもののほか、その教育活動等について、文部科学大臣が指定する団体の認定を受けたも
のであって、文部科学大臣が指定したもの
ハ イ及びロに掲げるもののほか、文部科学大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程
を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定したもの

文部科学省令第十三号)

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2012/08/24/1292457_1_1.pdf


イ、ロ、ハと3種類に分けられていますが、そのどれにも「文部科学大臣が指定したもの」という語が含まれています。つまり文部科学大臣が指定しなければ就学支援金が受けられる高等学校等にはならないので、最初に戻れば規則上は大臣が決めるという結論になります。
ただし、規則上は大臣が決めるとなっていても全く自由に大臣が決められるのかということでもないようです。少し前に田中大臣が新設の大学を認めないと言って大きな問題になったのは記憶に新しいところです。あの場合も規則上は大臣が決めることが出来るとなっていたはずです。

他に大臣の決定がニュースなどで話題になるものとしては死刑執行の命令や、外国人の特別在留許可などでしょうか。死刑執行は法律上はすみやかに行なわなければならないと決まってはいますが実態としてはあまり執行されず、任期中にまったく執行命令を出さない大臣もいます。特別在留許可については大臣の自由裁量で決められるとなっているようですが、ガイドラインによってどのような方針で決めるのかについては公開されています。

外国人学校についても判断基準があるようです。

また、各種学校のうち、学校教育法上、専修学校になることができないことから各種学校となっている外国人学校についても、日本国籍を持つ生徒も含め多くの生徒たちが、後期中等教育段階の学びを行っていることから、制度の対象となっています。

後期中等教育の判断にあたっては、各種学校である外国人学校について、制度的・客観的に「高等学校の課程に類する」かどうかにより判断することとし、

(イ)大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できるもの(ドイツ学校、韓国学校等の民族系外国人学校)、
(ロ)国際的に実績のある学校評価団体の認証を受けていることが確認できるもの(インターナショナル・スクール)、
(ハ)文部科学大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものとして、文部科学大臣が指定したもの、

について制度の対象としています。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1320159.htm


項目のイ、ロ、ハは文部省令のイ、ロ、ハと対応しているのだと思います。そしてイとロについては具体的な基準が示されているのに、ハについてはまたしても文部科学大臣が登場します。大臣の定めるところによりと、大臣が指定したものと2度も大臣が登場します。しつこく2度も「大臣が」となっているので大臣が決めるのだ、というような印象を受けました。だからまあ大臣がダメだと言ったらダメで、逆に大臣が変わったりしてOKになればOKということになるような気がします。


ところで調べていた気になったのが、東京都にある「ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和」という学校です。なぜかというとこの学校については“第十一学年及び第十三学年の課程に限る。”*2となっているからです。第十一学年から第十三学年ならば他と同じでしょうが、「から」ではなく「及び」です。つまり第十二学年の生徒は支援金の対象になっていないわけで、これが不思議です。学校として認めるとか認めないではなく、1年生と3年生は認めるけど2年生は認めないというようなことだからです。この学校は文部省令ではイに分類されるのですが、大使館を通じての確認で第十二学年は日本の高等学校の課程に相当する課程であるとは認められなかったのでしょうか。